研究室・教員

研究室紹介

大学院理学研究科附属臨海実験所 Sugashima Marine Biological Laboratory
海洋発生生化学グループ Group of Marine Developmental Biochemistry

教授
澤田 均海洋動物の受精機構に関する生化学的研究
講師
荒木 聡彦血管内皮細胞のアポトーシスとヘビ毒による出血機構
助教
原田 淑人受精の分子遺伝学、原索動物における自己非自己識別機構
助教
白江 麻貴(特任)受精及び配偶子形成の分子機構に関する研究
助教
伊勢 優史(特任)
海綿およびその他の海産無脊椎動物の分類、系統、生態に関する研究
助教
中澤 志織(特任)質量分析法を用いた受精機構に関する生化学的研究
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English
澤田 均教授
臨海実験所の教職員・学生

受精は精子と卵の出会いにより始まる、生命誕生の瞬間です。私たちは、この受精のメカニズムを分子の言葉で解明したいと考えています。実験材料としては、哺乳類と同じ脊索動物門に分類されるホヤ類(原索動物)を用いています。ホヤは発生生物学の実験に古くから用いられてきましたが、最近カタユウレイボヤのゲノム構造が解読され、一段と注目されるようになってきました。ホヤ類は一般に雌雄同体で精子と卵を同時に放出しますが、自家受精は起こしません。それに対して、卵黄膜を除去した卵では自家受精を起こします。このことから、精子が卵黄膜に結合する段階で、自己非自己識別を起こしていると考えられます。ホヤ類の自他認識機構については、著名な遺伝学者トーマス=ハント=モルガンも古くから研究しており、卵を酸処理すると自家受精するようになることや、いくつかの重要な発見をしています。私たちはモルガンの実験を追試し、その自他認識分子の探索研究を行いました。そして、表皮成長因子(EGF)に類似した構造の繰り返し配列からなる分子量約70Kの分子(VC70と命名)が、マボヤの精子レセプターであると同時に、自他識別分子でもあることを突き止めました。

また最近、カタユウレイボヤの自家不稔性(自家不和合性)を司る遺伝子の解明にも成功しました。その卵黄膜上の因子(v-テミス-A/B)と精子側の因子(s-テミス-A/B)の遺伝子は強く連鎖しており、世代を超えて分離しないこと、また個体間で異なる超可変領域が存在し、アレル(対立遺伝子)も多数存在すること、さらにこの遺伝子ペアは第2染色体と第7染色体の2カ所に存在し、両方のペアで自己と認識した時のみ、精子は自己卵とみなして卵黄膜から離脱することも明らかになってきました(図1参照)。

私たちは、上記の自他認識分子の研究に加えて、ライシン( 精子側の卵黄膜溶解物質)の探究研究も行っています。実際に、VC70が受精の場でユビキチン化されてから精子プロテアソームによって分解され、精子通過口が開けられることを見いだしています。ユビキチンとは、分解される基質タンパク質に共有結合修飾で標識される分解シグナルであり、細胞内タンパク質分解において中心的役割を担っています。しかし、細胞外で機能するという発見は私たちの独創的なものです。最近、私たちが見つけた卵黄膜のユビキチン化現象が、哺乳類やウニの受精においても起こっていることがわかり、受精の分野では今まさにホットな話題を呼んでいます。今後は、細胞外で機能する新しい精子ユビキチン−プロテアソーム系の全容解明に加えて、精子トリプシン様酵素アクロシンとスペルモシンのプロセシング機構や新しい生理機能の解明を目指して研究を行なう予定です。

当研究室では受精研究の他に、ヘビ毒による血管内皮細胞のアポトーシス誘導機構と出血機構についても研究を行っています。最近、ヘビ毒由来の血管内皮細胞アポトーシス誘導タンパク質(VAP)のX線結晶構造解析に成功し、標的分子の探索や基質特異性解析に関して、分子構造の側面から研究を行なっています。

図1

図2

References

  1. 澤田 均 編 (2014). 「動植物の受精学:共通機構と多様性」化学同人
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