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研究室紹介

生体調節論講座 Laboratory of Cell Regulation
微生物運動グループ Group of Microbial Motility

教授
小嶋 誠司細菌べん毛モーターの回転機構とべん毛本数・形成位置の制御機構の解析
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English
小嶋 誠司教授

細菌の運動器官:べん毛

細胞運動は生命の基本活動であり、運動を担う生体装置の作動原理解明は、生命科学に課された必須課題です。たった一つの細胞からなる原核生物の細菌も、環境中で生き抜くために有害な物質のある環境から逃げ、栄養源の方へ向かって移動する手段として、運動装置を用いています。多くの細菌では運動装置としてべん毛が使われ、螺旋状のべん毛線維部分を根元の細胞表層に埋め込まれたモーターにより回転させ、運動の推進力を生み出しています。

細菌べん毛モーターのエネルギー変換と回転のメカニズム

べん毛モーターは、筋肉などにみられる運動装置とは異なり、ATPではなく細胞膜を介したイオンの電気化学勾配(イオン駆動力)から回転力を生み出します。べん毛モーターは生体が持つ唯一の回転運動器官であり、他では例を見ない独自の化学-力学エネルギー変換機構を備えた超分子ナノマシンと言えます。また、べん毛モーターは左右両方向に毎秒1000回転もの高速回転ができ、かつ瞬時に方向転換するだけでなく、負荷を感知してエネルギー変換能を調節することができる高性能分子機械なのです。その分子メカニズムの面白さ(理学)や、生物に学ぶ新たな人工運動装置への応用(工学)といった側面だけでなく、病原細菌の感染にはべん毛運動が鍵となるため、医学的観点からもべん毛モーターは注目を集めています。しかし、細胞膜を介したイオンのエネルギーがどのように回転力に変換されてモーターが回るのか、その仕組みの多くがまだ謎に包まれています。私たちは、エネルギー変換ユニットである固定子と、回転方向の制御に関わる回転子リングの両方に着目し、構造と機能の関係を解き明かすことでモーターの仕組みを明らかにしようとしています。分子生物学(変異体解析)・細胞生物学(タンパク質局在)・生化学(タンパク質精製・活性測定)・生物物理学(運動能・回転の測定)・構造生物学の手法を用いて研究を進めています。

べん毛の本数と形成位置の制御

私たちの体は、発生の過程において、機能する分子が適切な時空間制御を受けて働くことで形作られています。また、組織や器官を正常に維持するには、機能分子が各部位に適量配置されて働く必要があり、この仕組みが破綻すると病気になってしまいます。このように生体分子を機能部位へ適切な量で配置することは、あらゆる生物が持つ基本的な機能と言えます。細菌においても、運動器官であるべん毛は、それぞれの菌が棲む環境で適切に運動できるように、本数や形成位置が厳密に決まっています。私たちは細胞の極に1本べん毛を形成する海洋性ビブリオ菌を材料として、なぜ「細胞の極」という特別な位置に、たった1本だけべん毛を形成することができるのか、その仕組みを探ろうとしています。複雑な生き物を使わずに、単純で増殖の速い細菌を用いて、生体超分子の適量配置機構の解明を目指した研究を進めています。

図1

海洋性ビブリオ菌とサルモネラ菌のべん毛モーター模式図

図2

海洋性ビブリオ菌の極べん毛本数と位置を制御するタンパク質(FlhFとFlhG)

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