論文紹介

第3回論文紹介(2004.6更新)

グループ名
機能調節学 超分子システム学
著者
村瀬琴乃、藤原敬宏、梅村康浩、鈴木健一、飯野亮太、山下英俊、斎藤美保子、村越秀治、ケン・リッチー、楠見明弘
タイトル(英)
Ultrafine membrane compartments for molecular diffusion as revealed by single molecule techniques
タイトル(日)
1分子法による細胞膜のコンパートメント化と膜分子のコンパートメント間ホップ拡散の研究
発表された専門誌
Biophysical Journal, 86(6):4075-93. (2004) [PubMed]

1分子観察・操作の結果、細胞膜についてSingerとNicolsonの「流動モザイクモデル」にパラダイムシフトを起こす重要な知見を得た。すなわち、(1)細胞膜は、30-200 nm程度の区画に仕切られていること(細胞によって大きさが違う)(2)脂質を含め全ての膜分子はこれらの区画の中に短時間(図1の滞在時間を参照)閉じこめられては、隣接する区画へとホップすること、(3)これをくり返すことによって細胞膜上の大きな範囲を拡散しうること、を示した。さらに多数の哺乳類細胞についてこれらが普遍的に成り立つことを示した(図1)。

さらに、この区画化は、細胞膜の細胞質側表面にあるアクチン骨格(膜骨格)に様々な膜貫通型タンパク質が結合し、それらがピケットのように働くことによっておこることもわかった(図2)。これらは、細胞膜における分子の拡散速度が、人工膜よりも1/5~1/50程度になる機構(25年来の大疑問)を明らかにしたものである。さらに受容体が活性化されてシグナル複合体を形成すると、しばしば運動が停止したり遅くなったりしてシグナル入力の位置情報が保持されるが、これがユニバーサルに起こる理由も理解できるようになった(もし、細胞膜が連続体の液体だったら、少々タンパク質が会合しても、拡散係数は変わらない。例えば、膜貫通型タンパク質が10量体を作ったとしても、拡散係数の減少は20%程度である。一方、ピケットとフェンスで区画化された膜だと、オリゴマーができるとホップしにくくなり、急激に拡散係数が減少する)。

図1:

様々な細胞で観察されたホップ拡散のパラメーターのまとめ。観察した全ての細胞膜でコンパートメントが存在した。コンパートメントの大きさ、コンパートメント内の滞在時間、コンパートメント間の障壁の高さは細胞によって違っていた。 

図2:

アンカード膜タンパク質ピケットモデル。膜骨格に沿ってアンカーされた膜貫通型タンパク質がピケラインのように立ち並び、立体障害の効果と流体力学的な摩擦効果によってリン脂質の拡散障壁となる。したがって細胞膜外層にあるリン脂質も膜骨格の網目でできたコンパートメントと同じところに短時間ではあるが、囲い込まれる。リン脂質はコンパートメント間をホップしながら、長距離にわたって拡散する。このような膜骨格にアンカーされる膜タンパク質は非常に多く(殆どの膜タンパク質は膜骨格に結合したフラクションをもっている)、特定のタンパク質だけが、ピケラインを作っているわけではない


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