論文紹介

第5回論文紹介(2005.5更新)

グループ名
発生生化学 臨海実験所
著者
澤田均、田中悦子、坂晋、山崎千穂、藤野淳子、大浦和人、阿部勇吉、松本健一、横沢英良
タイトル(英)
Self/nonself recognition in ascidian fertilization: Vitelline coat protein HrVC70 is a candidate allorecognition molecule.
タイトル(日)
ホヤの受精における自己非自己認識:卵黄膜タンパク質HrVC70はアロ認識候補分子で ある
発表された専門誌
Proc. Natl. Acad. Sci. USA 101: 15615-15620 (2004). [PubMed]

ホヤは雌雄同体で精子と卵を同時に放出するが自家受精は起こらないしくみになっている。この現象に関しては、著名な遺伝学者Thomas Hunt Morganによって前世紀初頭に盛んに研究が行われたが、その分子機構については未だに謎である。我々は、マボヤの卵黄膜タンパク質(HrVC70)が受精における自己非自己識別に深く関わっていることを明らかにした。この分子は、自家受精可能な未成熟卵の卵黄膜にはわずかしか結合していないが、自家不稔性が獲得される卵成熟過程で卵黄膜に多く接着してくる。また卵を弱酸で処理すると自家受精可能となるが、この処理によりHrVC70は卵黄膜から剥離することが示された。さらに、この分子をアガロースに結合させ精子の結合をみると、自己精子より非自己精子のほうが多く結合する。また、非自己HrVC70で精子を前処理すると強い受精阻害効果が観察される。この分子は、12回のEGF(表皮成長因子)様ドメインからなり、分子多型に富み、個体間で配列が僅かに異なっていることが判明した。ゲノム構造をみると、各EGFドメインはそれぞれ1個のエキソンに対応すること、またエキソンに加えてイントロンの配列においても相同性がみられること、分子多型はゲノムDNAの変異と組換えが原因であることがわかった。この分子は、獲得免疫系をもたないホヤ類の配偶子間相互作用における自他認識分子と考えられ、免疫系のルーツを探る鍵をも提供してくれるかもしれない。

図1:


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