論文紹介

第5回論文紹介(2005.5更新)

グループ名
遺伝子実験施設 遺伝子解析学
著者
松尾充啓、伊藤有紀、山内亮、小保方潤一
タイトル(英)
Rice nuclear genome continuously integrates, shuffles and eliminates the chloroplast genome to cause chloroplast-nuclear DNA flux.
タイトル(日)
イネの核ゲノムは葉緑体ゲノムを継続的に取り込み、混ぜ合わせ、排出する結果、葉緑体から核へ向かう定常的なDNAの流れを生み出している
発表された専門誌
The Plant Cell 17(3) :665-675,2005 [PubMed]

葉緑体DNAは進化の過程でしばしば核ゲノムへ転移したことが知られており、高等植物ではこの転移は現在も続いていると考えられています。しかし、転移したDNAがその後どうなるのか、と いった疑問を含め、このDNA転移の全体像はよく分かっていませんでした。本論文では、核ゲノム中にみられる葉緑体ゲノム由来の配列をnupDNA (nuclear-localized plastid DNA)と名付け、イネの核ゲノム配列データベースの中からnupDNA断片を網羅的に検索し、核に転移してから の年齢や構造、染色体上での分布、などを包括的に解析しました。その結果、核ゲノムは葉緑体ゲノムを (i) 頻繁に取り込み、(ii) 急速に断片化するとともに激しくシャフリングし、さ らに (iii) 数十万年の半減期で「急速に」核外に排出していることを、明らかにしました。こ れまで核と葉緑体のゲノムはそれぞれ孤立した存在と考えられていましたが、上記の知見は、植物細胞では葉緑体ゲノムから核ゲノムへ向かう定常的なDNAの流れ(フラックス)があり、核 ゲノムは葉緑体ゲノムの頻繁な転入と排出の平衡状態にあることを示しています。また、このDNAフラックスの形成には、染色体のセントロメア周辺領域が特に重要な働きをしていました。 これらの知見は、核ゲノムとオルガネラゲノムの関係や、細胞内共生進化のメカニズムに、新しい視点を提供します。

図1:


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