論文紹介

第11回論文紹介(2008.6更新)

グループ名
遺伝子解析学 遺伝子実験施設
著者
壁谷如洋、小林勇気、鈴木弘道、伊藤 潤、杉田 護
タイトル(英)
Transcription of plastid genes is modulated by two nuclear-encoded subunits of plastid RNA polymerase in the moss Physcomitrella patens.
タイトル(日)
ヒメツリガネゴケの色素体遺伝子の転写は2種類の核コードαサブユニットによってモジュレートされる
発表された専門誌
The Plant Journal 52, 730-741 (2007)

植物の色素体にはシアノバクテリア型のRNAポリメラーゼがあり、これが色素体ゲノムの光合成関連遺伝子を転写することが知られている。このRNAポリメラーゼを構成するコアサブユニットは、色素体遺伝子(rpoA, rpoB, rpoC1, rpoC2)にコードされ、シグマ因子は核ゲノムにコードされているのが一般である(図1)。ところが、コケ植物の蘚類では、なぜかαサブユニットをコードするrpoA遺伝子が色素体ゲノムではなく核ゲノムに存在する(第2回論文紹介参照;杉浦千佳ほか)。同じコケ植物である苔類とツノゴケ類ではこのようなことはなく、藻類や維管束植物と同じようにrpoA遺伝子は色素体ゲノムに存在する。本論文では、ヒメツリガネゴケの2種類のrpoA核遺伝子(PpRpoA1PpRpoA2)が色素体RNAポリメラーゼの構成サブユニットをコードすることを生化学的に実証し(図2)、さらに光制御による発現プロファイルも2つのPpRpoA遺伝子間で異なることを明らかにした。また、PpRpoA遺伝子破壊株の表現型観察や色素体遺伝子の発現レベルの変動を調べた結果、PpRpoA1よりもPpRpoA2のほうが色素体ポリメラーゼのサブユニットとして、より重要な役割を担っていることが強く示唆された。今後、この仮説をさらに実証する研究を進めていく必要があります。

図1:

藻類と大部分の陸上植物の色素体RNAポリメラーゼを構成するサブユニット遺伝子(rpoA, B, C1, C2)は色素体ゲノムに残っているが、コケ植物の蘚類では、rpoA遺伝子が核ゲノムに転移している

図2:

ヒメツリガネゴケ葉緑体からRNAポリメラーゼ活性画分を分離した(a)。この活性画分の中にPpRpoA1とPpRpoA2が共存していることを示したイムノブロット解析の結果(b)。実験に用いた抗体がPpRpoA1とPpRpoA2それぞれに対して特異的に反応することを示した結果(c)


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