論文紹介

第29回論文紹介(2017.6更新)

グループ名
細胞間シグナル研究グループ
著者

中山 拓弥*,篠原 秀文*,田中 美名,馬場 江輝,小川-大西 真理,松林 嘉克(*equal contribution)

タイトル(英)
A peptide hormone required for Casparian strip diffusion-barrier formation in Arabidopsis roots
タイトル(日)
シロイヌナズナ根の拡散障壁であるカスパリー線の形成に必要なペプチドホルモン
発表された専門誌
Science 355, 284-286 (2017)

植物は根から栄養分を吸収して成長するが、土壌中には生育に必須なイオン成分のみならず、生育に害を与える成分も存在している。植物の細胞と細胞の隙間(細胞間隙)には細胞壁が存在するが、細胞壁はすべての物質を通すため、そのままでは細胞間隙を通って組織の内部にまで各種イオン成分が侵入してしまう。今から約150年前の1865年にRobert Casparyが発見したカスパリー線は、根の内側の内皮細胞の周囲に形成される疎水性の拡散障壁(防水バリア)で、細胞同士の隙間を完全に埋めることによって、栄養分の輸送に関わる道管と外界との間における分子の自由な行き来を防ぐ働きをしている。本研究では、このカスパリー線の形成に必要なホルモン(Casparian strip Integrity Factor: CIF)を発見した。CIFは道管などが含まれる中心柱と呼ばれる組織でつくられ、内皮細胞の表面に存在する受容体GSO1/SGN3とそのホモログGSO2に結合する。このホルモンが作れない植物では、カスパリー線に多数の穴があき、根から栄養分が漏れ出たり土壌から有害な成分が侵入したりするために、植物体が土壌成分の変動に耐えられず、正常に生育できないことが明らかとなった。これらの結果は、刻々と変動する土壌栄養環境への植物の適応のしくみを理解する上で重要な手がかりとなる。

図1:根におけるカスパリー線の形成部位(A)とCIFの欠損による非連続化(B)


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