論文紹介

第29回論文紹介(2017.6更新)

グループ名
細胞間シグナル研究グループ
著者

大久保 祐里*、田中 美名*、田畑 亮、小川-大西 真理、松林 嘉克(*equal contribution)

タイトル(英)
Shoot-to-root mobile polypeptides involved in systemic regulation of nitrogen acquisition
タイトル(日)
全身的な窒素取り込みの制御に必要な葉から根へ移行するペプチド
発表された専門誌
Nature Plants 3, 17029 (2017)

窒素は植物の成長に最も重要な栄養素のひとつである。植物は根から窒素栄養分を主に硝酸イオンとして吸収するが、土壌中には硝酸イオンがいつも均一に十分量あるわけではない。そのため植物は、根の一部が窒素栄養不足を感知すると、他の根で相補的に多くの窒素栄養を取り込むしくみ(全身的窒素要求シグナリング)を持っている。この過程には葉が司令塔として重要な役割を果たす。すなわち、根が窒素欠乏を感知すると根の細胞がペプチドホルモンCEPを道管の中に分泌し、水とともに地上部へ運ばれ葉で受容体CEPRに認識される。これにより、根の一部が窒素欠乏であることを知った葉は、他の根で相補的に多くの硝酸イオンを吸収させるために根へ向けて別のホルモンを送り返す。本研究では、このホルモンの分子実体を明らかにした。CEPD(CEP Downstream)と命名したこのホルモンは、約100アミノ酸からなる非分泌型のポリペプチドで、CEP依存的に葉の師部でつくられて、師管内部を通って根へ長距離移行する。周囲に硝酸イオンがまだ存在している根がCEPDを受け取ると、硝酸イオン取り込み輸送体の発現が高まって、より多くの窒素栄養が取り込まれる。CEP-CEPR-CEPDシステムこそが、全身的窒素要求シグナリングの根幹を担っている。

図1:CEPとCEPDを介した全身的窒素要求シグナリング


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