論文紹介

第29回論文紹介(2017.6更新)

グループ名
遺伝子解析学グループ(遺伝子実験施設)
著者

一瀬 瑞穂、杉田 護

タイトル(英)
RNA editing and its molecular mechanism in plant organelles
タイトル(日)
植物オルガネラのRNA編集とその分子メカニズム
発表された専門誌
Genes 8 (1), 5, (2017). doi:10.3390/genes8010005

陸上植物のミトコンドリアと葉緑体で、RNA分子内の特定部位のシチジン(C)がウリジン(U)に変換される「RNA編集」が頻繁におこっている。コケ植物やシダ植物では、C→U RNA編集だけでなく、その逆のU→C編集もおこる。RNA編集は緑色藻類でおこらないことから、陸上植物になってから獲得した現象と考えられている。RNA編集によって、進化的に保存されたアミノ酸コドンに変換したり、翻訳開始コドンや終止コドンが形成されたりする。このことから、RNA編集はゲノムDNAに生じた変異を、RNAレベルで修復する遺伝情報の維持機構のひとつと言える。RNA編集が正しく行われるためには、編集されるべきCまたはUが正しく選別されなければならない。12年前にC→U RNA編集部位を認識する因子として、ペンタトリコペプチドリピート(PPR)タンパク質が初めて明らかにされた(図1a)。PPRタンパク質は編集部位上流に結合するが、編集部位との配列認識の基本原理が分かったのは数年前のことである(図1b)。最近の研究で、PPRタンパク質とは異なる様々なRNA編集因子も次々と発見された。しかし、肝心要のRNA編集酵素の本体はまだ謎のままであり、U→C編集因子の実体もまったく分かっていない。今後の大きな課題である。

図1:RNA編集部位認識因子と編集部位認識の基本原理

(a) 2タイプのRNA編集部位認識因子。31アミノ酸からなるSモチーフ、35アミノ酸のPモチーフ、35または36アミノ酸のLモチーフの繰り返し領域のC末端に、EモチーフまたはE+DYEモチーフが付加したPPRタンパク質。
(b) P, L, Sそれぞれのモチーフ内の5番目と35番目のアミノ酸ペアで1つの塩基が認識される。NSまたはNNはCを、TDはGを、TNはAを、NDはUを認識する。DYWモチーフはシチジンデアミナーゼ触媒活性の保存アミノ酸モチーフ(HxE(x)nCxxC)を持つことから、C→U RNA編集酵素であると考えられている。


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