論文紹介

第29回論文紹介(2017.6更新)

グループ名
生殖分子情報学グループ
著者

植田 美那子, Ernst Aichinger, Wen Gong, Edwin Groot, Inge Verstraeten, Lam Dai Vu, Ive De Smet, 東山 哲也, 梅田 正明, Thomas Laux

タイトル(英)
Transcriptional integration of paternal and maternal factors in the Arabidopsis zygote
タイトル(日)
シロイヌナズナ受精卵における父母因子の転写の統合
発表された専門誌
Genes & Development・31 (6)・617-627・2017

父の精細胞と母の卵細胞が受精して生じる受精卵では、父母のそれぞれに由来する因子が混ざり合っている。しかし、父母の因子が単に混在するだけなのか、あるいは協力して胚発生に寄与するのかは、これまで全く分かっていなかった。本論文では、父性因子であるSSPと、母性因子であるHDG11/12が協力して、受精卵の非対称な分裂と、胚のパターン形成を制御することを発見した。モデル植物であるシロイヌナズナの胚発生過程では、受精卵はまず極性化し、非対称分裂することで、将来の植物体の地上部と地下部を結ぶ上下軸を確立する(図1)。この体軸形成に先んじて、偽キナーゼであるSSPは、mRNAの状態で精細胞から受精卵に持ち込まれる(図2)。SSPタンパク質は受精卵でMAPキナーゼ経路を活性化し、最終的にWRKY2転写因子をリン酸化する。リン酸化によって活性化されたWRKY2は、卵細胞から持ち込まれたHDG11/12転写因子とともに、別の転写因子をコードするWOX8遺伝子のプロモーターに結合し、その転写を誘導することで、受精卵の極性化から始まる胚発生を促進することが分かった。これは、あらかじめ卵細胞に蓄えられた母性因子のみを使って初期胚を作るという動物の発生とは異なった様式であり、植物では、父母の因子が協働して受精卵自身での遺伝子発現を誘導することで、体軸を形成するという、新たな発生戦略を示す知見となった。

図1:シロイヌナズナの発生様式

図2:父母因子が協働して初期発生を担う仕組み


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