論文紹介

第29回論文紹介(2017.6更新)

グループ名
植物生理学グループ
著者

林 真妃、井上 晋一郎、上野 宜久、木下 俊則

タイトル(英)
A Raf-like protein kinase BHP mediates blue light-dependent stomatal opening
タイトル(日)
Raf様キナーゼBHPは青色光による気孔開口を仲介する
発表された専門誌
Scientific Reports, 7:45586 (2017)

植物の表皮には気孔が数多く存在し、植物はこの孔を通して光合成に必要な二酸化炭素の取り込み、蒸散や酸素の放出など、大気とのガス交換を行っている。一つの気孔は一対の孔辺細胞により構成されており、太陽光に含まれる青色光に応答して開口する。孔辺細胞に青色光が当たると、光受容体であるフォトトロピンが活性化し、細胞内でシグナル伝達を誘導する。このシグナルにより細胞膜プロトンポンプが活性化されて気孔が開口する。この細胞膜プロトンポンプの活性化は、気孔開口の駆動力を生み出す重要な反応であるが、青色光がどのようにプロトンポンプを活性化するのか、シグナル伝達の詳細は完全には明らかになっていない。本研究において我々は、青色光に依存した気孔開口を仲介する新規因子BHPを同定した。このBHPを欠損したbhp変異株の気孔では、青色光を照射してもプロトンポンプの活性化が見られず、正常に気孔が開口しない(図1)。
また、これまでに明らかになっている気孔開口調節因子であるBLUS1やPP1との結合を調べ、BHPがフォトトロピンやBLUS1と共に細胞内で複合体を形成し、気孔開口の初期過程おいて重要な働きをもつことを明らかにした(図2)。本研究の成果は、植物の光合成を支える気孔開口のメカニズム解明に大きく貢献するものである。

図1:bhp変異株の気孔の応答

(A) 上の蛍光画像は、孔辺細胞のプロトンポンプの活性化を示し、下のグラフはその蛍光強度の定量結果を示している。bhp変異株では、野生株のような青色光によるプロトンポンプの活性化がみられない。
(B) bhp変異株では、野生株のような青色光による開口がみられない。

図2:青色光に依存した気孔開口の分子メカニズム

青色光は、フォトトロピンに受容され、細胞膜プロトンポンプを活性化し、細胞内へのカリウムイオン取り込みを誘導する。これにより、浸透圧が上昇し、水が取り込まれ、孔辺細胞の体積が増加することで気孔が開口する。本研究では、BHPがフォトトロピンと細胞膜プロトンポンプの間をつなぐ重要なシグナル伝達因子であることを証明した。


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