論文紹介

第30回論文紹介(2017.10更新)

グループ名
生殖分子情報学グループ
著者

元村 一基, 河島 友和, Frédéric Berger, 木下 哲, 東山 哲也, 丸山 大輔

タイトル(英)
A pharmacological study of Arabidopsis cell fusion between the persistent synergid and endosperm
タイトル(日)
シロイヌナズナ残存助細胞-胚乳融合の薬理学的研究
発表された専門誌
Journal of Cell Science (2017) doi: 10.1242/jcs.204123

細胞融合は動物の胎盤形成や受精など、様々な生命現象において必須の機構である。筆者らは以前にシロイヌナズナを用いて、植物の受精直後に起こる新奇細胞融合現象を報告した。この"助細胞胚乳融合"と呼ばれる現象によって、動物の多精拒否に対応するような、余剰の花粉管誘引の停止が引き起こされることが明らかになってきた(図1。詳細は第25回論文紹介 “細胞融合による残存助細胞の迅速な排除” を参照)。興味深いことに、植物ではこのような細胞融合は厚い細胞壁のためにほとんど起こらないと考えられており、助細胞胚乳融合に関してもその分子メカニズムは不明である。
そこで本研究では助細胞胚乳融合の分子メカニズムに迫るため、細胞内で起こる分子の動きとの関わりについて、阻害剤実験により検討した。すると意外なことに、動物の細胞融合で一般的に重要と考えられているアクチンや微小管の重合を阻害したり、細胞外分泌経路を阻害したりしても、助細胞胚乳融合は起きた。それとは異なり、細胞周期や新規遺伝子発現を阻害すると助細胞胚乳融合が起きないことが明らかになった (図2)。これらの結果より、助細胞胚乳融合は動物における既知の細胞融合現象とは大きく異なるメカニズムで引き起こされていることが示唆された。

図1:重複受精と助細胞胚乳融合の模式図。

花粉管誘引能を持つ助細胞の一方は花粉管突入により崩壊し、残存したもう一方の助細胞は受精直後に胚乳との細胞融合により迅速に不活化される。

図2:助細胞胚乳融合における細胞周期阻害剤の影響。

上図: 胚乳のサイトゾルをGFPで光らせた受精直後の胚珠. 胚乳核周辺に留まっていたサイトゾル (左)が助細胞胚乳融合により残存助細胞に移動した (右)。下図: 細胞周期阻害剤Roscovitine存在下では、残存助細胞へのサイトゾルの移動が起きなかった。


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