論文紹介

第30回論文紹介(2017.10更新)

グループ名
動物器官機能学グループ
著者

日比 正彦、松田 光司、竹内 未紀、清水 貴史、村上 安則

タイトル(英)
Evolutionary mechanisms that generate morphology and neural-circuit diversity of the cerebellum
タイトル(日)
小脳の形態と神経回路の多様性を生み出す進化機構
発表された専門誌
Development, Growth & Differentiation 59(4): 228-243, 2017

小脳は後脳の最前端背側部に由来する中枢神経組織である。脊椎動物の小脳は、グルタミン作動性神経である顆粒細胞と、GABA作動性神経であるプルキンエ細胞を含む。これら小脳ニューロンは、脊椎動物で保存されたメカニズムにより、神経前駆細胞または神経幹細胞から産生される。しかし、脊椎動物の小脳は解剖学的形態と小脳神経回路において多様性を示す。例えば、円口類(脊椎動物の進化過程で最初期に分岐している)の小脳は、極めて分化程度の低い小脳しか持たない。軟骨魚類は、顆粒細胞、プルキンエ細胞、小脳深部核(投射ニューロンを含む)を持つ。条鰭類は、小脳深部核は持たないが、その代わりにプルキンエ細胞の近傍にeurydendroid細胞と呼ばれる投射ニューロンを有する。条鰭類の中でも、真骨魚類のゼブラフィッシュの小脳は比較的単純な小葉構造を持っているが、弱電気魚モルミルスの小脳は巨大で複雑な小葉構造を持っている。哺乳類を含む羊膜類は、非常に多くの顆粒細胞を含み、背側終脳(新皮質)と機能的に連絡を持った、巨大で複雑な小葉構造を持つ小脳を独自に進化させた。円口類や軟骨魚類を用いた最近の研究から、小脳形成の遺伝的プログラムは、祖先型脊椎動物ですでに作られていたことが示唆されている。本総説では、進化の過程で、遺伝的・細胞生物学的プログラムの書き換えがどのように小脳の多様性を生み出したかを議論する。

図1:小脳の多様性創出のメカニズム 進化過程における細胞生物学的プログラムおよび遺伝学的プログラムの変化を示している。


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