論文紹介

第30回論文紹介(2017.10更新)

グループ名
動物器官機能学グループ
著者

松田 光司、吉田 将之、川上 浩一、日比 正彦、清水 貴史

タイトル(英)
Granule cells control recovery from classical conditioned fear responses in the zebrafish cerebellum
タイトル(日)
ゼブラフィッシュ小脳において、顆粒細胞は古典的条件付け恐怖反応からの回復を制御している
発表された専門誌
Scientific Reports, 7(1):11865, 2017

これまで小脳は古典的恐怖条件付けに関与することが示されてきたが、小脳のどの神経回路素子がどのように古典的恐怖条件付けに関わっているかは未だ明らかでない。我々はこの問題を解決するため、LED照明の消灯を条件刺激(CS)、電気ショックを無条件刺激(US)とした古典的恐怖条件付けをゼブラフィッシュ仔魚に対して行った。USは拘束下のゼブラフィッシュ仔魚において、徐脈を引き起こした。CSとUSを組み合わせて繰り返し提示すると、かなりの比率のゼブラフィッシュ仔魚で、CS提示に誘発された徐脈反応を示した。我々は、古典的恐怖条件付け学習におけるゼブラフィッシュ小脳の役割を調べるため、小脳神経細胞にボツリヌス毒素やカルシウムインジケーターGCaMP7aを発現させた。ボツリヌス毒素により小脳体の顆粒細胞の神経伝達を阻害した場合、CS提示により誘発される徐脈反応は抑制されなかったが、むしろ徐脈反応が延長した。また、条件付け後にCS提示により活動する小脳ニューロンを特定した。これらのニューロンの活動は、条件付けの間次第に上昇し、その後CSのみの提示を繰り返すと徐々に下降した。これらのニューロンの多くはCS提示に対して即座に活動したが、いくつかのニューロンは遅れて活動した。我々の発見により、ゼブラフィッシュにおいて顆粒細胞は恐怖条件付け反応からの回復を制御していることが示された。

図1:ゼブラフィッシュ仔魚における古典的恐怖条件付け学習

(a) 古典的恐怖条件付け学習の実験的パラダイム。「条件付け前」ではCS提示のみ行う試行を10~15回、「条件付け」ではCSとUSを組み合わせた試行を20回、「試験」にではCS提示のみの試行を10回行った。
(b) 古典的恐怖条件付け学習における心拍の変化。「条件付け」の途中からCSに対して条件付け恐怖反応(徐脈)を示すようになった(太線)。その後、「試験」において明確な徐脈が観察されるようになった。

図2:古典的恐怖条件付け学習依存的な小脳ニューロンの活動

(a)ニューロンでGCaMP7aが発現するゼブラフィッシュ系統を用いて恐怖条件付け学習を行った。その結果、小脳体と呼ばれる領域に限局して、条件付け依存的な神経活動が観察された。
(b) 古典的恐怖条件付け依存的な活動パターンは2種類あることが分かった。免疫染色により、古典的恐怖条件付け学習において活動するニューロンは顆粒細胞であることが示唆された。


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