論文紹介

第30回論文紹介(2017.10更新)

グループ名
生体膜機能グループ
著者

宮ノ入 洋平、土方 敦司、西野 優紀、郷原 瑞樹、尾上 靖宏、小嶋 誠司、白井 剛、甲斐荘 正恒、本間 道夫

タイトル(英)
Structural and Functional Analysis of the C-Terminal Region of FliG, an Essential Motor Component of Vibrio Na+-Driven Flagella.
タイトル(日)
ビブリオ菌Na+駆動べん毛の必須モーター蛋白質FliGのC末端領域の機能構造解析
発表された専門誌
Structure・vol 25, 1540-1548・2017 doi: 10.1016/j.str.2017.08.010

細菌べん毛モーターの回転子は本研究では、FliF, FliG, FliM, FliNなどの蛋白質がリング構造を作ることで構成される(図A)。本研究では、遺伝子組み換え技術により、海洋性ビブリオ菌 Vibrio alginolyticusに由来する力発生にもっとも重要なFliG蛋白質のC末端ドメイン(FliGc)およびべん毛モーターの回転方向に異常をきたすアミノ酸変異体を調製し、それらの構造情報を比較することで、回転方向の変換制御の解明を目指した。その結果、野生型FliGcは一つの分子において、一個に固定された構造にとどまるのではなく、主に3つのコンフォメーションを形成し、それらの構造間を行き来するダイナミックな性質を有していることが、核磁気共鳴(NMR)解析および分子動力学解析により明らかになった。一方、282番目のAla残基がThr残基に置換され、べん毛モーターの回転方向が時計回りにのみ固定されてしまう変異型FliGc (FliGc-A282T)においては、そのような複数のコンフォメーションはみられなかった。FliGcには、3つのαヘリックスからなるC1ドメインと、6つのαヘリックスで構成されるC2ドメインが存在しています。そのうち、C2ドメインの1番目のヘリックス(α1ヘリックス)は柔軟性に富んでおり、C1ドメインとC2ドメインをつなぐ“蝶番”として働き、FliGcの構造に“複数の表情”を生み出していることが明らかになった(図B)。FliGcのダイナミックな構造変換がべん毛モーターの回転方向の変換制御を担っていることが示唆された。

図:

(A)べん毛モーター回転子構造の模式図。多くの細菌は細胞表面から生えた繊維(べん毛)をスクリューのように回転させることで、泳ぐための推進力を生み出す。根元には回転モーター(べん毛モーター)が存在し、モーターの駆動部は回転子と固定子から構成される。回転子部分の電子顕微鏡解析で得られた立体構造にFliF, FliG, FliM, FliNの結晶構造で解かれている部位が当てはめられた。
(B)前進と後退時のモータークラッチ部位構造。本研究から明らかになった野生型と時計回転バイアス変異体のFliG分子のモデルを示した。赤で示したα1部位に大きな変化が見られた。


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