論文紹介

第31回論文紹介(2018.6更新)

グループ名
生体膜機能グループ
著者

小嶋 誠司、高尾 真登、Gaby Almira、河原 郁美、佐久間 麻由子、本間 道夫、児嶋 長次郎、今田 勝巳

タイトル(英)
The helix rearrangement in the periplasmic domain of the flagellar stator B subunit activates peptidoglycan binding and ion flux
タイトル(日)
べん毛固定子Bサブユニットにおけるペリプラズムドメインのヘリックス構造変化がペプチドグリカン結合とイオン透過能を活性化する
発表された専門誌
Structure (2018) 26, 590-598.

細菌のべん毛モーターは、細胞膜を介したイオン駆動力を回転力に変換するナノマシンである。エネルギー変換を担う膜タンパク質複合体の固定子は、回転子周囲の細胞壁(ペプチドグリカン(PG)層)に固定されるとイオン透過能が活性化し、トルクを生み出すことができるようになるが、固定子活性化の分子メカニズムは未解明であり、そもそも固定子の細胞壁への固定すら実験的証明がされていなかった。今回我々は、サルモネラの固定子Bサブユニット(MotB)の機能に必須なペリプラズム領域(MotBC)にL119P変異が生じるとモーターに組み込まれやすくなることに着目し、この変異をもつMotBcがPG層と結合することを見出した。続いてMotBcの溶液中での構造をNMRにより調べたところ、L119P変異によって引き起こされた構造変化はN末端側のヘリックスα1に局在することがわかった。この結果に一致して、MotBc-L119Pの結晶構造においてα1は検出できず、α2以降の構造は野生型とほぼ同じであることが明らかとなった。さらに、α1とPG結合領域をジスルフィド架橋させると運動能が阻害されたことから、固定子が活性化しPG層に結合した構造において、α1全体の構造が変化している可能性が示唆された。本研究により、固定子の組み込み・イオン透過の活性化・細胞壁への固定がα1の構造変化で連携して起こることが明らかとなった。

図1:固定子の組込み・活性化・固定が連動する仕組み

モーターからはずれた固定子は縮んだ構造を持ち、プラグ(plug)と呼ばれる蓋がイオンの通り道をふさいでいる。細胞壁に結合する部分はα1が隠している(白抜き赤三角)。固定子が回転子周囲に来ると活性化型に変化し、α1が伸びて細胞壁に結合する場所が露出し(赤三角)、細胞壁に固定される。同時にプラグが開いてイオンが流れ、回転力が発生する。野生型またはL119P変異を持つMotBCを精製したPGと混ぜて遠心すると、野生型MotBC(不活性型に対応)は沈殿せず上清(S)に検出されるが、MotBC-L119P(活性化型に対応)はPGに結合し沈殿(P)に検出される。


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