論文紹介

第32回論文紹介(2018.10更新)

グループ名
分子神経生物学グループ
著者

青木 一郎、立山 充博、下村 拓史、井原 邦夫、久保 義弘、中野 俊詩、森 郁恵

タイトル(英)
SLO potassium channels antagonize premature decision making in C. elegans
タイトル(日)
SLOカリウムチャネルは線虫C. elegansにおいて尚早な意思決定を抑制する
発表された専門誌
Communications Biology 1, Article number: 123 (2018)

変動する環境で生存するために、動物は環境変化に応じて適切なタイミングで行動を変化させる必要があります。しかしながら、行動変化のタイミングがどのように制御されているかは全く不明でした。

線虫C. elegansは、過去に飼育された温度を嗜好するが、飼育温度を変化させると3時間ほどで新しい温度を嗜好するようになります。我々の研究グループは、この現象をモデル系として、どのような分子・神経メカニズムが行動変化、すなわち学習、の速度を制御するかを調べました。その結果、ヒトのてんかんの原因となるSLO-2カリウムチャネルの異常によって、線虫の温度嗜好性の変化が遅くなることがわかりました。このSLO-2カリウムチャネルの異常は、飼育温度の変化によって起こる温度受容ニューロンAFDの反応性の変化も遅延させたことから、線虫が温度を学習する速度はこのAFDの反応性の変化によって制御される可能性があります。

この研究によって、学習速度を制御する分子および神経メカニズムが初めて明らかになりました。また、線虫による新規温度の学習を、てんかんのモデル系として用いることで、抗てんかん薬の探索やてんかんの分子機構の解明を、より速く簡便に行える可能性があります。

図1:

飼育温度が変化したときに、SLO-2カリウムチャネルは、温度受容ニューロンAFDの反応性の変化を遅くすることで、行動の変化に適度なタイムラグを与える。


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