論文紹介

第32回論文紹介(2018.10更新)

グループ名
超分子構造学研究グループ(構造生物学研究センター)/共同研究グループ名:同志社大学生命医科学部、三重大学大学院工学研究科
著者

田中 駿介、林 真人、瀧口 金吾、中谷 真規(同志社大)、作田 浩輝(同志社大)、吉川 研一(同志社大)、湊元 幹太(三重大)

タイトル(英)
Specific Spatial Localization of Actin and DNA in a Water/Water Microdroplet: Self-Emergence of a Cell-Like Structure
タイトル(日)
2種類の高分子から形成される液—液相分離系における核酸DNAと細胞骨格蛋白質アクチンの特異な分布局在:自発的な細胞質様階層構造の形成
発表された専門誌
ChemBioChem・19・1370-1374・2018

近年、細胞内の複雑な構造(多様なオルガネラの形成や配置、顆粒などの膜によって隔てられていない領域など)が形成・維持される機構について、相分離の視点から研究され始めている。

本研究では、液 - 液相分離(LLPS)を示すことができる親水性ポリマー、ポリエチレングリコール(PEG)およびデキストラン(DEX)の水性二相系(ATPS)を用いて、微小滴が生成されることを示し、それを細胞サイズの水性/水性マイクロドロップレット(CAMD)と名付けた。

このCAMDは、二本鎖DNAやアクチン線維を捕捉し、溶液中で偏在させることが出来た。DNAも、細胞骨格の1つアクチン線維も、生体内で重要な働きをしている天然高分子ポリマーである。このDNAやアクチンの局在化は、その分子サイズや構造、重合状態に依存していた。DNAの場合は、それが一本鎖か二本鎖か、あるいはその鎖長に依存し(図1、左)、アクチンの場合は、単量体か重合したアクチン線維かに依存していた(図1、右)。

興味深いことに、二本鎖DNAとアクチン線維を同一のCAMDに共存させると、DNAおよびアクチン線維が相互に排除し合って分布する場合も観察された(図2)。この知見は、溶液内における微小で重層的な区画化構造の形成機構、すなわち、オルガネラの形成や、特に、膜によって隔てられていない構造の起源の一旦について光を当てる成果である。

図1:

   左:短い一本鎖DNA(上)と長い二本鎖DNA(下)の分布。Bars=100μm。
   右:単量体のG-Actin(上)と重合したF-Actin(下)の分布。Bars = 50μm。

図2:

   長い二本鎖DNAとF-Actinを同時に系に加えた場合の結果。
   左は観察結果、右はその模式図。Bar=100μm。


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