論文紹介

第32回論文紹介(2018.10更新)

グループ名
超分子構造学研究グループ(構造生物学研究センター)
著者

田中 駿介、瀧口 金吾、林 真人

タイトル(英)
Repetitive Stretching of Giant Liposomes Utilizing the Nematic Alignment of Confined Actin
タイトル(日)
封入アクチン線維のネマティック配向を利用した巨大リポソームの繰返し変形
発表された専門誌
Communications Physics・1・Article number: 18・2018

近年、細胞の運動や形態制御に関する機構についての理解を深めるため、あるいは細胞サイズの分子機械を開発するため、細胞骨格を封入させた細胞サイズの巨大リポソームが構築され利用されている。

その成果の一例として、微小管および分子モーターであるキネシンやダイニンを用いた持続的に変形可能なリポソームの実証研究が報告されている。しかしながらこれまで、外部刺激によって制御される反復動作を実現することには誰も成功していない。

本研究では、リポソーム内に封入されたアクチンの濃度が、生きた細胞の細胞質に匹敵するならば、分子モーターであるミオシンを利用しなくても、アクチン線維の封入だけで、リポソームを紡錘形に変形させることが出来ることを明らかにした。さらにそれらの形状は、浸透圧を調整することによって、または蛍光標識されたアクチン線維の励起光照射による人為的切断によって、紡錘形と球形との間で可逆的に変化させることが可能であった(図1)。特に後者による形状変化は何度も反復が可能で、しかも変形の際、糸状仮足または先体突起に良く似た膜突起の伸長および短縮を伴った(図2)。これらの結果は、アクチン線維の様な可変長の糸状高分子が、細胞が見せる様な運動や変形の再現・実現のための有力材料の候補であることを示している。

図1:

蛍光標識されたアクチン線維の励起光照射による人為的切断と照射後に自発的に起こる線維長の回復によって反復が可能になった変形。写真中のON/OFFは、その時点における励起光照射の有無を示す。

図2:

膜突起の伸長短縮を伴った反復変形。2回分の繰返し過程の連続写真。数字は1回目の励起光照射の開始を基点とした経過時間(秒)。鏃は膜突起の先端の位置を示す(*:先端が視野外まで伸長)。


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