論文紹介

第32回論文紹介(2018.10更新)

グループ名
生体膜機能グループ
著者

Zhu, S, 錦野 達郎、小嶋 誠司、本間 道夫, Liu, J

タイトル(英)
The Vibrio H-ring facilitates the outer membrane penetration of polar-sheathed flagellum
タイトル(日)
鞘に囲まれたビブリオ菌極べん毛の外膜貫通を促進するHリングの役割
発表された専門誌
J. Bacteriol.・in press・2018  doi: 10.1128/JB.00387-18

多くのバクテリアはべん毛を回転させることで、生存に有利な環境へ移動する。べん毛は20種類以上のタンパク質が適切に発現し、リング構造の複合体を形成することによって組みあがる。べん毛を構成するタンパク質は多くのバクテリア間でよく保存されているが、海洋性ビブリオ菌(V. alginolyticus)のべん毛にはH-ring, T-ringと呼ばれる他のバクテリアにはない特徴的なリング複合体が存在する。T-ringは少なくともFlgTが構成因子として分かっていたが、その他の構成因子について不明であり、ビブリオ菌べん毛におけるT-ringの役割についても良く分かっていなかった。そこで我々は、米国Yale大学のJun Liu博士、Shiwei Zhu博士との国際共同研究をすすめ、Cryo-ET法によりin situでビブリオ菌の極べん毛の構造解析を行った。我々がT-ringの構成因子であると予想したFlgOを欠損させた株では、T-ringの外側の密度が見えなくなった。また、FlgT欠損株では、べん毛が細胞外に形成されず、内膜と外膜の間で形成されていた( Periplasmic flagellum)。このことから、FlgOがT-ringの構成因子の一つであることが明らかとなった。また、べん毛が外膜を透過して細胞外に形成されるために、T-ringが重要な役割を持つことを見出した。

図1:野生型(WT)とFlgO欠損株のべん毛

(A-C)多極性鞭毛を有する ビブリオ菌KK148株由来のflgO変異体の3D再構築の代表的なクライオ電子顕微鏡の断面図。(D-F)A-C断面像の拡大表示。 (G)flgO変異体からのべん毛のトモグラム平均化断層像のスライス像。(H)KK148における野生型極べん毛のトモグラム平均化断層像のスライス像。パネルGとHとの間の構造的差異は、紫色の矢印で指し示す。(I)ビブリオ菌(Vibrio)極べん毛モーターのトモグラム平均化断層像から作られた模式図。 (J)Gで得られたトモグラム平均化像の3次元表面レンダリング像。(K、L)Hで得られたトモグラム平均化像の3次元表面レンダリング像。Hリングの内側構造と外側構造はオレンジとピンクの色で表示。 Tリングは黄色で表示。 OM、外膜; IM、内膜。

図2:FlgT欠損株でみられたペリプラズムべん毛

Cryo-ETによるin situでのΔflgT株のべん毛観察。ビブリオ菌KK148株由来のflgT変異体の代表的な断層像。モーターが、外膜の下に見える(A、B)。モーター部分は、シアンで、フックは黄色で指し示す。べん毛フィラメントがペリプラズム空間で観察される(C、D)。べん毛フィラメントを赤色で指し示す。(E)べん毛フィラメントは、ペリプラズム空間で伸び、鞘なしで外膜を貫通している。(F)べん毛フィラメントは、ペリプラズムから鞘をもって菌体外に伸長している。


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