論文紹介

第32回論文紹介(2018.10更新)

グループ名
生体機序論グループ
著者

久本 直毅、柘植 杏菜、ストラヒル パストゥホフ、清水 達太、花房 洋、松本 邦弘

タイトル(英)
Phosphatidylserine exposure mediated by ABC transporter activates the integrin signaling pathway promoting axon regeneration
タイトル(日)
ABCトランスポーターが仲介するホスファチジルセリンの露出が神経軸索再生を促進するインテグリンシグナル経路を活性化する
発表された専門誌
Nature Communications 9: 3099 (2018).

神経軸索が傷害を受けると、神経軸索の再生開始を誘導するシグナル伝達カスケードが活性化する。しかしながら、神経軸索再生の調節メカニズムは現時点では十分には理解されていない。我々は以前、線虫C. elegansにおいて、死細胞の貪食に関与するインテグリンやRac GTPアーゼなどの因子が、MAPキナーゼ経路の活性化を介して切断された神経軸索の再生誘導を行うことを明らかにした(Pastuhov et al., J. Neurosci. 36, 9710-9721, 2016)。今回、神経軸索再生においてインテグリンの上流で機能する因子として、トランスサイレチン様タンパク質TTR-11を同定した。TTR-11はインテグリンの細胞外ドメインと、脂質の一種であるホスファチジルセリン(PS)の両方に結合する。神経軸索の傷害は、通常は細胞内側にしかないPSの軸索傷害部位への蓄積を誘導するが、その蓄積にはTTR-11が必要であり、さらにABCトランスポーターであるCED-7、カスパーゼであるCED-3およびCa2+シグナルが必要であった。さらに分子遺伝学的な解析から、CED-3はCED-7のC端を切断してこれを活性化することで、神経軸索再生を誘導することも示唆された。以上のことから、TTR-11はPS傷害シグナルをインテグリンの活性化に繋げることで神経軸索再生を誘導することが明らかになった。

図:今回の研究で判明したTTR-11を介した神経軸索再生誘導機構


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