論文紹介

第33回論文紹介(2019.6更新)

グループ名
海洋発生生化学グループ
著者

中澤 志織、白江-倉林 麻貴、澤田 均

タイトル(英)
The role of metalloproteases in fertilisation in the ascidian Ciona robusta
タイトル(日)
カタユウレイボヤの受精における金属プロテアーゼの役割
発表された専門誌
Scientific Reports ・9・1009・(2019)

我々は、カタユウレイボヤ精子表面に、I型トロンボスポンジンドメインを持つアスタシン様金属プロテアーゼが多く含まれることをプロテオーム解析により明らかにしている。今回、この5種類の酵素のcDNAクローニングを行い、推定アミノ酸配列を決定すると共に、精子に存在することを確認した。本酵素はI型トロンボスポンジンドメインとアスタシン様ドメインを併せ持つユニークな酵素であり、Tunicate astacin and thrombospondin type 1 repeat-containing (Tast) proteinと命名した。精子金属プロテアーゼの受精における役割を調べる目的で、金属プロテアーゼ特異的阻害剤であるGM6001の受精阻害効果を検討したところ、GM6001は正常卵の受精(卵割)を強く阻害するが、媒精後の卵割は阻害しないこと、また卵膜除去卵の受精は阻害しないことが示された。また、単離卵膜に精子を加えると卵膜成分が分解され、それがGM6001で阻害されることが判明した。これらの結果は、カタユウレイボヤ精子表面のアスタシン様金属プロテアーゼ(Tast)が、精子の卵膜通過時に、おそらく卵膜ライシンとして、卵膜の分解に重要な役割を果たすことを示唆している。この遺伝子をゲノム編集により破壊したところ、変態時期に障害が起こり、GM6001も同様に変態時に発生を阻害した。これらの結果は、Tastが胚発生にも関与することを示唆している。今まで、金属プロテアーゼは孵化酵素として機能するという報告はあるが、受精時の卵膜ライシンとして機能するという報告はなく、初めての知見である。


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