論文紹介

第34回論文紹介(2019.10更新)

グループ名
植物生理学グループ
著者

上原 貴大、水谷 佳幸、桑田 啓子、廣田 毅、佐藤 綾人、溝井 順哉、高尾 早織、松尾 宏美、鈴木 孝征、伊藤 照悟、斎藤 杏美、大川 妙子、篠崎 和子、吉村 崇、Kay Steve、伊丹 健一郎、木下 俊則、山口 潤一郎、中道 範人

タイトル(英)
Casein kinase 1 family regulates PRR5 and TOC1 in the Arabidopsis circadian clock
タイトル(日)
カゼインキナーゼ1ファミリーはシロイヌナズナの時計機構においてPRR5とTOC1を制御する
発表された専門誌
PNAS・116・11528-11536・2019年

真核生物における概日時計の分子機構では、転写翻訳フィードバックが重要である。しかし、時計の性質の共通性に反して、動物と植物の時計転写翻訳フィードバックは起源が異なる遺伝子で構成されている。今回我々は、植物時計を撹乱する低分子化合物の探索およびその化合物の作用機序を解明することで、植物時計の分子機構のさらなる理解を目指した。まず化合物スクリーニングによって、PHA767491という動物のCDK9/CDC7の阻害剤が植物時計を長周期化することを発見した。PHA767491の分子プローブを設計し、これに結合するタンパク質をプロテオミクス解析で同定した。得られたタンパク質は、カゼインキナーゼ1(CK1)であり、この植物には13のCK1遺伝子(CKL1からCKL13)があることが判明した。CK1ファミリー遺伝子の一括的な発現抑制は化合物の効果と同様に時計を長周期化した。またこの化合物処理後のトランスクリプトーム解析、既知の時計変異体の化合物の感受性などの解析によって、CK1が植物時計で機能するPRR5とTOC1をリン酸化し、それらの安定性に深く関わることを突き止めた。CK1は動物やカビなどの時計で重要な役割をしていることが知られているため、今回の研究はCK1が広い真核生物分類の時計に共通して機能することをも提示した。名古屋大のプレスリリースもご覧ください。http://www.nagoya-u.ac.jp/about-nu/public-relations/researchinfo/upload_images/20190517_itbm001.pdf

図1:PHA767491の植物での標的候補はCK1ファミリー

PHA767491をビーズに共有結合させ, そのビーズに特異的に結合する植物タンパク質をプロテオミクス解析で同定した. 動物やカビなどに保存されているCK1(水色)に類似した植物タンパク質が取得された(CKL, 緑). このCKLファミリーの次に類似する植物のMLKファミリーはビーズに結合しない(赤色).

図2:PHA767491とCKLタンパクの植物概日時計への作用

試験管内でCKL4タンパク質はPRR5タンパク質をリン酸化し, PHA767491はそのリン酸化を阻害する (左上). 植物にPHA767491を処理すると, PRR5タンパク質の量が増える (左下). 左上と左下の実験はTOC1タンパク質についてもPRR5と同様の結果が得られている.PHA767491による周期延長効果はprr5 toc1で減弱する (右上). ただしprr5 toc1のPHA767491感受性は完全に消失しないため, PRR5とTOC1に依存しないPHA767491の作用経路も存在すると示唆される.


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