論文紹介

第34回論文紹介(2019.10更新)

グループ名
植物生理学グループ
著者

青木 沙也、藤 茂雄、中道 範人、林 優紀、Yin Wang、鈴木 孝征、辻 寛之、木下 俊則

タイトル(英)
Regulation of stomatal opening and histone modification by photoperiod in Arabidopsis thaliana
タイトル(日)
日長による気孔開口とヒストン修飾の調節
発表された専門誌
Scientific Reports・9・10054・2019年

気孔は一対の孔辺細胞により構成される植物の表皮にある穴で、太陽光に応答して開き、光合成に必要な二酸化炭素の取り込みや、水と酸素の放出など、植物体の通気口として働いています。これまでの研究により、日の長さに依存して花芽形成を誘導する因子(光周性因子)が、孔辺細胞において光による気孔開口を促進する働きを持つことが明らかとなっていました。今回私たちは、日の短い環境で育てた植物よりも、日の長い環境で育てた植物では、光周性因子の働きにより、気孔が大きく開くこと、さらに興味深いことに、日の長い環境から日の短い環境に植物を移動しても、少なくとも1週間は気孔が大きく開く効果が持続することを発見しました。さらなる解析の結果、遺伝子の発現制御に重要な働きをもつタンパク質であるヒストンの修飾状態が日の長さと関連していることがわかりました。今回の発見は、植物の光合成や成長に重要な働きをする気孔が、環境情報を細胞レベルで記憶していることを示すものであり、その仕組みの解明に繋がる分子メカニズムが明らかとなってきました。名古屋大のプレスリリースもご覧ください。http://www.itbm.nagoya-u.ac.jp/ja/research/2019/07/post-13.php

図1:気孔孔辺細胞における日長の記憶

短日条件と比較すると長日条件では、光による気孔開口が増加する。孔辺細胞においても長日条件では光周性花成誘導にかかわるFT遺伝子の発現が上昇する。すると、転写因子SOC1遺伝子の発現が誘導され、同時に、FT依存的にSOC1遺伝子近傍のヒストンH3K4のトリメチル化が引き起こされる。さらに、長日から短日に移し、1週間は気孔の開口促進が維持され、その際、FTの発現は減少したのに対して、SOC1の発現は高いレベルで維持される。植物の孔辺細胞は、少なくとも1週間は、FTに依存した気孔開口促進とSOC1の発現上昇を維持する記憶システムを持っていることが明らかとなり、ヒストンH3K4のトリメチル化が記憶のメカニズムである可能性が示唆された。


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