論文紹介

第34回論文紹介(2019.10更新)

グループ名
生体膜機能グループ
著者

尾上 靖宏、岩城 雅代、信夫 愛、西原 泰孝、岩月 哲人、寺島 浩行、北尾 彰朗、神取 秀樹、本間 道夫

タイトル(英)
Essential ion binding residues for Na+ flow in stator complex of the Vibrio flagellar motor.
タイトル(日)
Na+駆動型べん毛モーターPomAの膜貫通部位Thr残基のイオン透過における役割
発表された専門誌
Scientific Reports (2019) 9:11216. doi: 10.1038/s41598-019-46038-6.

細菌の運動は、固定子と回転子からなる超分子モーターの回転により実現される。その回転は、イオン流によって駆動される。ビブリオ菌のNa+駆動型固定子は、4分子のPomAと2分子のPomBから構成される複合体である。膜貫通部位の保存されたアスパラギン酸残基(PomB D24)が、イオン結合残基と考えられている。イオン選択透過機構を明らかにするために、膜貫通部位のPomA(T5、T158、T185およびT186)およびPomB(T21)で保存されているスレオニン残基をアラニン置換した変異体を作成した。PomA-T5AおよびPomB-T21Aはほとんど運動能が失われ、PomA-T158A、PomA-T185AおよびPomA-T186Aは完全に運動能が失われた。ATR-FTIR分光法を用いて、イオン結合による変異体固定子の構造変化を調べると、野生型で検出されるNa+イオン特異的な結合シグナルがPomA-T158AとPomA-T186A変異体では、PomB-D24N変異体と同じように消失した。これは、スレオニン変異によって、D24へのNa+イオン結合ができなくなったと解釈できる。スレオニン残基の役割を調べる為に、MDシミュレーションを行った。PomA-T158とPomA-T186の動きに注目して解析を行った結果、膜貫通ヘリックスが動いて、D24に近づいてくることが観察された。さらに、変異によりNa+イオンが固定子を通過できなくなった。これらスレオニン残基がNa+イオンの水との相互作用を切り、D24にNa+イオンが結合できるようしていることが推測された(図1)。

図1:べん毛モーター固定子におけるイオン透過モデル

PomAの細胞質ループとFliGの相互作用により、PomA TM-3およびTM-4の細胞質側へのスライド運動が誘導される(A)。この運動により、TM-3のT158にTM-BのD24が近づき、Na+結合部位を形成する(B)。Na+が細胞質側に放出されると、TM-3とTM-4は元の位置に戻る。 この再スライド運動は、細胞質ループの構造変化を誘発し、FliGとの界面でトルクを生成する(C)。これら3つのモードをサイクルすることで、イオンが流れ、トルクが作られる。


pagetop