論文紹介

第34回論文紹介(2019.10更新)

グループ名
生体膜機能グループ
著者

三野 平、錦野 達郎、岩月 啓人、小嶋 誠司、本間 道夫

タイトル(英)
Effect of sodium ions on conformations of the cytoplasmic loop of the PomA stator protein of Vibrio alginolyticus
タイトル(日)
海洋性ビブリオ菌固定子PomAの細胞質領域におけるナトリウム依存的構造動態解析
発表された専門誌
Journal of Biochemistry (2019) doi: 10.1093/jb/mvz040

Vibrio.alginolyticusのナトリウム駆動型べん毛固定子は、PomAとPomBという膜タンパク質から構成されるヘテロ6量体で、ナトリウムイオン流入と共役して、回転力を作ります。PomAの細胞質領域が、回転子タンパク質FliGと直接相互作用し、回転力トルク生成されます(図1)。しかし、このPomAの細胞質領域の立体構造については全く分かっていません。本研究ではPomAの細胞質領域によく保存された荷電残基にシステイン(Cys)変異を導入し、ビオチンマレイミドの反応性を比較することで細胞質領域の構造変化を検出しました。Cys変異体へのin vivo標識実験により、E96C残基部位へのビオチンマレイミド反応性がナトリウムイオンの存在によって低下することが明らかになりました(図1)。この反応性の低下はFliGの存在にかかわらず生じ、ナトリウムイオン流入に関与するPomBプラグ欠失変異体やD24N変異体でも同様のナトリウムイオン依存的な結果が得られました。この現象はビブリオ菌生体内だけではなく、プラスミドからPomAおよびPomBを発現させた大腸菌生体内でも検出されましたが、精製された固定子複合体へのin vitro標識では検出されませんでした。これらの結果は、ナトリウムイオンが生体膜上のPomAの細胞質領域、E96C残基の周辺に、立体構造上の変化を引き起こすことを示しています。

図1:V. alginolyticusのナトリウム駆動型べん毛モーターのモデル

モーターの回転子は、いくつかのリング構造とそれをつなぐロッドで構成されています。回転力発生にもっとも関与しているCリングは、FliG、FliM、およびFliNの3種類のタンパク質で構成されています。固定子は2種類の膜タンパク質PomAとPomBで構成され、ナトリウムイオンを流します。固定子と回転子の相互作用で、回転トルクが作られます。OM、PG、およびIMは、それぞれ外膜、ペプチドグリカン層、および内膜を表します。(B)PomAとFliGの相互作用モデル。いくつかの荷電残基は、相互作用において重要な役割を持つことが提案されています。 PomAとFliGの相互作用に重要と考えられている、正と負に帯電した残基を、それぞれ赤と青で示した。

図2:PomAのloop2-3領域のシステイン置換変異体におけるビオチンマレイミドの表面アクセシビリティの検出

固定子変異多べん毛株(NMB348, flhG ΔpomAB ΔfliG)に、システイン置換PomA変異体(K89C、E96C、E97C、およびE99C)、およびシステインレスPomB(PomB-C8A / C10A / C31A)を産生するプラスミド(pYA303-cyslessおよびpNT1)導入して、ナトリウムイオン(A:Na+)またはカリウムイオン(B:K+)バッファーで、ビオチンマレイミド標識を行いました。PomA抗体により免疫沈降したタンパク質をSDS-PAGEで分離し、PomAタンパク質を免疫ブロットで検出し(下方パネル)、一方、ビオチンマレイミド標識タンパク質は、ストレプトアビジン結合HRPによって検出した(上方パネル)。


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