論文紹介

第35回論文紹介(2020.7更新)

グループ名
ニューロサイエンス研究センター栄養神経科学講座, 脳回路構造学グループ
著者

石元広志、上川内あづさ

タイトル(英)
A feedforward circuit regulates action selection of pre-mating courtship behavior in female Drosophila.
タイトル(日)
ショウジョウバエのメスの交尾前性行動を制御するフィードフォワード神経回路
発表された専門誌
Current Biology, Feb 3;30(3):396-407.e4. doi: 10.1016/j.cub.2019.11.065. Epub 2020 Jan 2.


ショウジョウバエのメスは、多くの動物と同様、たとえ同種であってもオスの求愛をすぐには受け入れない。この拒否行動は、交尾相手を選択する行動であり、種の存続や進化の生物学的な理解に重要である。しかしながら、メスの交尾意思を制御する脳神経回路や分子機構の多くは未解明である。本研究は、この拒否から受容への行動転換を制御する脳神経回路を同定し、その動作を制御する分子機構を世界で初めて明らかにした。

本研究で同定した神経回路は、オスの性的な情報を統合する上方前大脳内側部(SMP)領域に入力部を持つ2対のドーパミン作動性神経細胞(PPM3)で駆動され、交尾拒否を促進するアセチルコリン作動性神経細胞群(R4d)をGABA /グルタミン酸作動性の神経細胞群(R2/R4m)が制御する(図参照)。ドーパミンとグルタミン酸の入力でR4dが活性化される一方で、NMDA受容体の活動に依存してR4d内で一酸化窒素(NO)が合成される。このNOの逆行性シナプス伝達でR2/R4mがGABA放出を高め、GABAA受容体を介してR4dを抑制する。これにより、メスの性行動が拒否からはじまり、次第に受容へと行動が転換するのである。上記の抑制制御を発動するためには、SMP/PPM3からのドーパミンシグナルの維持が重要である。このことは、ホ乳類の大脳基底核において、他の個体との親密度を制御する仕組みと類似している。

図:メスの交尾意思を制御する脳神経回路

(A)交尾意思決定のフィードフォワード回路。抑制因子を内包するため、Type-I Incoherent feedforward loop型を示す。(B)逆行性シナプス伝達。a.グルタミン酸経路でNOS(NO合成酵素)が活性化。b.シナプスを逆行したNOは、前シナプスのsGC(soluble guanylyl cyclase)を活性化してシナプス放出を促進する。この回路は楕円体内に存在する。


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