論文紹介

第35回論文紹介(2020.7更新)

グループ名
生体膜機能グループ
著者

錦野 達郎、岩月 啓人、三野 平、小嶋 誠司、本間 道夫

タイトル(英)
Characterization of PomA periplasmic loop and sodium ion entering in stator complex of sodium-driven flagellar motor.
タイトル(日)
Na+イオン透過に対する海洋性ビブリオ菌べん毛モーター固定子PomAのペリプラズム領域の機能解明
発表された専門誌
J Biochem 167:389-398 (2020)

べん毛モーターのトルクは、膜内外の電気化学エネルギーを運動エネルギーに変換することで生じる。このエネルギー変換にはイオンチャネルとして働き2種類の膜タンパク質PomA, PomBからなる「固定子」と、自身が回転する「回転子」と呼ばれる2つのタンパク質複合体の相互作用が必要である。PomAは4回膜貫通タンパク質であり、1, 2番目の膜貫通領域(TM)の間に存在するループ領域(Loop1-2)はペリプラズムに存在すると考えられている。Loop1-2中のD31残基をCysに置換したD31C変異体はモーターが回転するのに高いNa+イオンを必要とする。PomBは1回膜貫通型タンパク質で、TM内にNa+が結合するD24残基が存在し、それをAsnに置換したD24N変異体はNa+が固定子を通らない。また、TMのC末端側に存在するPlug領域(44-58)はイオン透過を制御している。この領域を含む80残基(41-120)を欠失したプラグ欠失固定子は常にNa+が固定子中を流れてしまう。Plug領域の機能解明のためにPlug欠失固定子の精製を試みたところ、PomAがPomBから解離してしまった。しかし、PomA-D31CやPomB-D24N変異を組み合わせて精製したところ、複合体を精製できた(図1)。この結果から、Na+が固定子中を流れる際にPomAとPomBの相互作用が変化するモデルを提案した(図2)。

図1:ゲル濾過クロマトグラフィーによるPomAB複合体の精製プロファイル

(A)野生型(PomA/PomB)とプラグ欠失固定子(PomA/PomBΔ41-120(=PomBΔL))の比較。野生型では溶出10.51 mlをピークに複合体が回収できた。一方で、プラグ欠失固定子はPomAがPomBから解離し回収できなかった。(B)PomB-D24N変異をもつ固定子とプラグ欠失固定子の比較。どちらも溶出11-12mlに複合体が回収できた。右の図は、回収したプラグ欠失固定子のサンプル中のタンパク質をSDS-PAGEにより分離し、ゲルをCBBで染色した結果を示した。溶出11-12mlのサンプルにPomAとPomBΔLを示すバンドがみられ、確かに複合体で精製できている。(C)PomA-D31C変異をもつ固定子とプラグ欠失固定子の比較。どちらも溶出10-11mlに複合体が回収できた。右の図は、(B)と同様にプラグ欠失固定子のサンプルのSDS-PAGE後のゲルをCBBで染色した結果を示した。溶出11-12mlのサンプルにPomAとPomBΔLを示すバンドがみられ、確かに複合体で精製できている。/p>

図2:ビブリオ菌PomAPomB固定子複合体の活性化メカニズムのモデル

ビブリオ菌のもつ運動器官の一つである極べん毛モーターは、回転子(Rotor)と固定子(Stator)が相互作用することでトルクを生み出す。Na+チャネルとして働く固定子(WT-stator)はPomA, PomBからなり、普段は膜上を拡散している。この状態ではPlugが閉じているためにPomAとPomBがタイトに相互作用し、Na+がチャネルポアを通ることができない。固定子が回転子の周りに集合するとPomBのC末端領域(PomBC)がT-ring、及びPomAがFliGと相互作用することで活性化する(Rotorの左側のWT-stator)。活性化に伴い、Plugが開くことでPomAとPomBの相互作用が緩み、Na+が固定子を通ることができるようになる。一方で、Plug欠失固定子(Plug deletion stator)はPomAとPomBの相互作用が常に弱いため、固定子が回転子の周りに集合していなくても、Na+が固定子を通ってしまう。 OM, PG, IMはそれぞれ外膜、ペプチドグリカン層、内膜を示す。回転子を空色、PomAを赤、PomBを青、PomBのPlug領域を水色で示した。


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