論文紹介

第35回論文紹介(2020.7更新)

グループ名
分子神経生物学グループ
著者

池田 宗樹、中野 俊詩、Giles C Andrew、Xu Linghuan、Costa Wagner Steuer、 Gottschalk Alexander、森 郁恵

タイトル(英)
Context-dependent operation of neural circuits underlies a navigation behavior in Caenorhabditis elegans
タイトル(日)
線虫C. elegans のナビゲーションは状況依存的な神経回路動作によって実現する
発表された専門誌
Proc. Natl. Acad. Sci. 117: 6178-6188 (2020)

動物は、脳・神経系で環境からの情報を処理し、運動出力を調節することでよりよい環境へと移動します。線虫C. elegansは、一定の温度下で餌のある条件で飼育されたのち、温度勾配上に置かれると、過去に飼育された温度へと移動します。この行動は温度環境に応じて調節されていて、飼育温度より高い温度域では温度勾配を下り、低い温度域では勾配を上るような行動制御が行われます。これまでに、線虫は方向転換の頻度などを温度勾配上で調節して、過去の飼育温度へと到達することが知られていました。しかしながら、温度環境依存的な行動制御がどのような神経回路で実現しているのか、特に、感覚入力から運動出力に至る包括的な神経回路は明らかとなっていませんでした。今回、我々は神経細胞を脱落する線虫株を網羅的に作成し、それらを高解像度行動分析および計算論的アプローチによって解析することで、温度勾配上での行動制御を支配する複数の神経回路を明らかにしました。驚くべきことに、同一の行動要素であっても、温度環境の違いによって異なる神経回路が作動していることを見出しました。さらに、神経活動の計測実験から、感覚ニューロンから直接入力を受け取る介在ニューロンの活動が、温度環境の違いによって興奮と抑制の制御を受けていることを見出しました。これらの結果から、環境に依存した柔軟な情報処理を実行する神経回路動作原理が明らかとなりました。

図:


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