第35回論文紹介(2020.7更新)
- グループ名
- 脳回路構造学グループ
- 著者
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Yuki Ishikawa, Natsuki Okamoto, Yusuke Yoneyama, Naoki Maeda, Azusa Kamikouchi
- タイトル(英)
- A single male auditory response test to quantify auditory behavioral responses in Drosophila melanogaster.
- タイトル(日)
- キイロショウジョウバエの単独オスにおける聴覚行動の定量方法の確立
- 発表された専門誌
- J Neurogenet 1 - 11 2019年5月
多くの動物は、同種とコミュニケーションをするために音を用いる。キイロショウジョウバエやその近縁種もまた、翅を震わせて奏でる音を求愛シグナルとして用いる。求愛歌はサイン歌とパルス歌で構成され、パルス歌はメスの交尾受容性やオスの求愛活性を上昇させる。パルス歌のパルス間隔は種間で多様であり、同種の歌がより強い行動応答を誘導する。このことから、ハエは同種の求愛歌を識別できると考えられる。しかし、これまでハエの聴覚応答は集団レベルでのみ解析されており、それぞれの個体がどのような聴覚識別能力を持つのかは解析されてこなかった。そこで、私たちはキイロショウジョウバエの単独オスに対して様々な音を提示し、個体レベルの聴覚識別能力を定量する実験系を確立した。オスは、ノイズや純音には反応せず、パルス歌に対してのみ運動活性を上昇させた。同種のパルス歌に対して異種よりも強く応答することから、この運動活性上昇はオスの聴覚識別能力を反映していると考えられる。また、ハエはパルス間隔のばらつきのない歌によく応答することから、パルス間隔のばらつき具合も認識できると考えられる。聴覚器の切除により、この行動応答は聴覚によるものであることが確かめられた。近縁種であるオナジショウジョウバエやセイシェルショウジョウバエが運動活性の上昇を見せなかったことから、このような行動応答を引き起こす聴覚刺激は種間で多様であることがわかる。

今後の予定