論文紹介

第35回論文紹介(2020.7更新)

グループ名
生殖生物学グループ
著者

菊地 真理子、西村 俊哉、石下 聡、松田 洋一、田中 実

タイトル(英)
foxl3, a sexual switch in germ cells, initiates two independent molecular pathways for commitment to oogenesis in medaka
タイトル(日)
生殖細胞の性のスイッチである foxl3 は、卵を作り出すのための2つの仕組みを動かす
発表された専門誌
Proc. Natl. Acad. Sci. USA 117,12174-12181. (2020) doi.10.1073/pnas.1918556117.

生殖細胞は、卵と精子のどちらにもなりうる細胞です。しかしながら、“卵になることを決める仕組み(性のスイッチ)”と“生殖細胞が卵を作り出す仕組み”とがどうつながっているのかは解明されていません。卵になるために、細胞はいくつかの特徴を備えなくてはなりません。
これまでに我々の研究グループは、硬骨魚類メダカを用いて生殖細胞の性のスイッチ遺伝子「foxl3」を脊椎動物であることを同定してきました(図1)(注1)。
今回のこの論文では、foxl3 によって生殖細胞が卵になると決めた後で働き出す遺伝子が、卵の2つの特徴を作り出すことを明らかにしました。そこでは2つの実働因子(rec8afbxo47)が働き、生殖細胞の卵への分化を誘導していることを明らかにしました(図2)。rec8a は卵が遺伝子量が普通の細胞の半分であることに関わります。fbxo47 は卵胞という卵の特徴を作り出していくことに関わります。この結果、性のスイッチと卵を作る仕組みとが分子レベルで初めて連結され、卵形成の解明に大きく近づきました。さらに、rec8afbxo47 は、性を持つ生物に広く保存されていることがから、性決定と卵形成をつなぐこの仕組みは生物界に普遍的な仕組みであることが示唆されました。
またこの卵になる仕組みを壊すと、精子ができることも分かりました。つまり、卵になるためには精子になる道を抑えていなくてはならないこともわかり、生殖細胞はひとたび卵になろうとしても、状況によっては精子にもなれる柔軟性を備えていることも見えてきました。

図1:

図2:


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