論文紹介

第36回論文紹介(2020.11更新)

超分子構造学グループ
著者

湊元 幹太(三重大)、作田 浩輝(同志社大)、瀧口 金吾、吉川 研一(同志社大)


タイトル(英)
Nonspecific characteristics of macromolecules create specific effects in living cells.
タイトル(日)
細胞に特異的な効果をもたらす高分子の非特異的な性質

発表された専門誌
Biophysical Reviews・12巻(2号)・425–434・2020 (doi: 10.1007/s12551-020-00673-w)


近年、生細胞におけるミクロ相分離は、細胞内の複雑な構造の組織化と機能発現に重要な役割を果たしている現象として強い関心を集めている。実際多くのグループが、脂質二重膜によって囲まれていない非膜性の細胞小器官が形成される際の非常に有力な機構として、液液相分離(Liquid-Liquid Phase Separation (LLPS))に着目した研究を行っている。 生細胞において本当に相分離が起きているのか、そしてその具体的な役割は何か、それらを確認するには、良質なモデル再構成システムが必要である。 本解説は、LLPSを取り巻く現在の状況について紹介すると共に、モデル再構成システムを利用した研究の具体例として、LLPSを起こすポリエチレングリコール(PEG)/デキストラン(DEX)の二成分高分子溶液中において、DNAやアクチン細胞骨格などの生体高分子が示す特異な局在化(図1)や、異なる細胞のその種類に依存した分布(図2)に関する研究成果について紹介する。得られた知見から、個々のDNAの発現や酵素反応の様な特異的な生化学的反応の調節に、特異的な相互作用や結合が無くても誘導される相分離と相転移が重要な役割を果たしている可能性が示唆されている。

図1:PEG/DEX二成分高分子溶液中における細胞様構造の自発的出現

(a)PEGとDEXを混合(各濃度、5%)すると、LLPSによって細胞と同等サイズの微小液滴が出現する。スケールバーは、100 μm。

(b-i)重合状態に応じたアクチンの局在。単量体のアクチン蛋白質は均一に分布したが(上段)、重合して出来たアクチン線維はDEXが豊富な液滴内に分布した(中央、KCl 40 mM)。更に束化したアクチン線維は液滴の表面に局在した(下段、MgCl2 2.0 mM)。スケールバー 50 μm。

(b-ii)液滴内での自発的局在化によるアクチン線維と長鎖DNAの協調的分布。アクチン線維とλDNA(49 kbp)は液滴の内部で別個に局在した。偏光顕微鏡像から(上段4枚組の写真の右下)、アクチン線維がDNAを排除する様にネマチック液晶状態を形成していることが明らかにされた(下段の概略図を参照)。スケールバーは、100 μm。(Nakatani et al., ChemBioChem 2018 より改変。)

図2:

LLPSを起こしたPEG/DEX二成分高分子溶液中における赤血球(Red blood cell)と上皮細胞(Epithelial cell)の分布。細胞の種類によって分布の様子が異なっている。スケールバーは、左側の4枚の写真では 50 μm、中央の各細胞を示す2枚の蛍光写真では 100 μm. を各々示す。


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