論文紹介

第36回論文紹介(2020.11更新)

グループ名
分子修飾制御学グループ
著者

小原 圭介、樋口 舞、小倉 佑季、西村 浩平、嘉村 巧

タイトル(英)
Rapid turnover of transcription factor Rim101 highlights a flexible adaptation mechanism against environmental stress in Saccharomyces cerevisiae.
タイトル(日)
転写因子Rim101の迅速な分解によって浮き彫りになった出芽酵母の柔軟なストレス適応機構
発表された専門誌
Genes to Cells・25 (10)・651-662・2020

細胞は様々な細胞外ストレスに曝されている。細胞外ストレスはしばしば単一ではなく、様々な種類と強度のブレンドとして襲い掛かる。細胞がそれら無数のパターンに対して各種ストレス応答経路をチューニングして総合的に最適な細胞応答を引き起こす仕組みは明らかになっていない。本研究では、外界のpH上昇(アルカリ化)に対する応答経路であるRim101経路を題材にして研究を行った。Rim101経路では転写因子Rim101が切断を受けて活性化する。私達は、切断前および切断後のRim101がともに半減期約15分という短寿命なタンパク質であり、プロテアソームで素早く分解されることを見出した。切断活性型のRim101が蓄積すると、アルカリストレスに対する耐性は亢進したが、カドミウムストレスに対しては超高感受性を示した。逆にカドミウムストレス応答経路を引き起こす転写因子を過剰発現するとアルカリストレスに対して脆弱になった。すなわち、両経路は互いに両立しづらく、負のインパクトを与え合うbad chemistryな関係にあることが明らかになった。本研究の意義は、活性化したストレス応答経路を迅速に不活性化することが他のストレスに柔軟に対応するために必要であることを初めて明確に示した点にある。また、ストレス応答経路同士の相互作用マップの描画という大きなゴールに向けた第一歩でもある。

図:アルカリ応答経路とカドミウム応答経路は互いに負のインパクトを与え合い、両立しづらいbad chemistryな関係にある。転写因子Rim101の迅速な分解はカドミウムストレスなど他のストレスに柔軟に対応するために必要である


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