論文紹介

第36回論文紹介(2020.11更新)

グループ名
生体膜機能グループ
著者

Carroll Brittany, 錦野 達郎, Guo Wangbiao, Zhu Shiwei, 小嶋 誠司, 本間 道夫, Liu Jun

タイトル(英)
The flagellar motor of Vibrio alginolyticus undergoes major structural remodeling during rotational switching
タイトル(日)
海洋性ビブリオ菌べん毛モーターの回転方向切り替えの際の構造変化
発表された専門誌
eLife. 9:e61446. (2020) doi: 10.7554/eLife.61446.

細菌のべん毛は、時計回り(CW)と反時計回り(CCW)の両方向に回転することができるモーターをもつ。モーターのトルクは、膜内外に形成される電気化学勾配が運動エネルギー変換されることで生じる。このエネルギー変換は、回転子中の「Cリング」及び、イオンチャネルとして機能する「固定子」と呼ばれる2つの複合体の相互作用により生じる。モーターの回転方向は、走化性(Che)シグナルと呼ばれるChe因子のリン酸化/脱リン酸化のリレーが、回転子に伝わることで制御される。具体的には、Che因子のCheYがリン酸化されると回転子中のFliMに結合できるようになり、回転方向がCCWからCWに切り替わる。CheYが脱リン酸化されるとFliMから解離し、回転方向はCCWに切り替わる。CheYに依存したFliMの構造変化は、回転子中のFliGの構造変化を引き起こし、その結果、FliGと固定子の相互作用界面が変わることで回転方向が切り替わると考えられていたがその詳細はよくわかっていなかった。本研究では、電子顕微鏡を用いたクライオトモグラム法とビブリオ菌のモーターの回転方向がCWまたはCCWに偏るFliG変異体を組み合わせることで、in situの状態のCリング構造を解析した(図1)。その結果、モーターの回転が時計回り、反時計回りの状態でのCリングの構造に差異あることを明らかにした(図2)。

図1:海洋性ビブリオ菌の超低温電子顕微鏡像とトモグラム

(A)海洋性ビブリオ菌の細胞と細胞から生えたべん毛の電子顕微鏡写真。繊維の根元(白矢印)には細胞膜に埋まったモーターが存在する。(B)得られた電気顕微鏡像から三次元トモグラムを作成した後、モーター部分の平均密度を得た。(C)(B)の白破線部分を拡大した。本研究で着目したCリング(C-ring)や輸送装置(EXP及びATPase)の密度が精度良く得られている。

図2:反時計回り回転時、及び時計回り回転時のCリングの構造の比較

左のカラムが反時計回り(CCW)回転時の構造情報、右のカラムが時計回り(CW)回転時の構造情報を示している。(A, B)得られた電子線密度から得られた細胞膜(CM)やCリングのモデル図。反時計回りと時計回りでCリングの傾きや直径に違いがみられた。時計回りの構造ではCリングの外側にCheYと考えられる密度(白)がみられた。(C, D)得られた密度マップにFliG, FliM, FliNの構造を当てはめた。構造中にはFliG:FliM:FliNが1:1:3の割合で含まれている。FliGとFliMはそれぞれN末端ドメイン(FliGN, FliMN)、ミドルドメイン(FliGM, FliMM)、C末端ドメイン(FliGC, FliMC)の3つのドメインに分けて当てはめると密度に対して構造がうまく当てはまった。FliGCの黄色の部分は固定子と相互作用する荷電残基を示している。FliMの分子の傾きが変化することでFliGの位置が大きくずれることが分かった。


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