研究代表者 |
松永幸大 |
所 属 |
大阪大学大学院工学研究科 |
著 者 |
Daisuke Kurihara, Sachihiro Matsunaga, Susumu Uchiyama, and Kiichi Fukui
(
栗原大輔、松永幸大、内山進、福井希一) |
論文題目 |
Live cell imaging reveals plant Aurora kinase has dual roles during mitosis
(ライブセルイメージングにより明らかとなる細胞分裂期における植物オーロラキナーゼの2つの機能) |
発表誌 |
Plant Cell Physiol., 49: 1256-1261 (2008) |
要 旨 |
細胞分裂は、1つの細胞から2つの娘細胞へと遺伝情報を均等に分配するという、生命の根幹をなす過程である。細胞分裂期はダイナミックな染色体運動を伴う過程であり、その異常は直接異数染色体や細胞死へと繋がるため、厳密に制御されなければならない。本研究では、細胞分裂といったダイナミックな現象におけるオーロラキナーゼの動的な機能を解析するために、蛍光タンパク質を用いたライブセルイメージングを行うことによって動的な情報を得ることを考えた。微小管および動原体を蛍光タンパク質により可視化したタバコ培養細胞を確立して、オーロラキナーゼ特異的阻害剤を処理したところ、細胞分裂前中期において動原体の赤道面上へ整列が遅くなった。また細胞分裂後期において、片方の動原体は正常に極に移動するが、もう一方は赤道面上に取り残され遅れて移動するという遅延染色体動態(図2青矢じり)と両方の動原体ともに赤道面上へ取り残され遅れて極へ移動するという2種類の遅延染色体動態(図2赤矢じり)が1つの細胞で同時に観察された。このように、微小管と動原体を同時に可視化した植物細胞を用いて動態観察することによって、オーロラキナーゼは分裂前中期での染色体整列において、異常な動原体―微小管連結の解除、また分裂後期での染色体分離において姉妹染色分体間の接着の解消といった2種類の機能を持つことが示唆された(図2)。
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図1 微小管を緑色蛍光タンパク質GFP、動原体を赤色蛍光タンパク質RFPで可視化したタバコ培養細胞。正常細胞では核膜崩壊後10分で動原体は全て赤道面上に整列したが、オーロラキナーゼを阻害した細胞では28分かかった。また姉妹染色体が分配される細胞分裂後期に、極への移動が遅れる遅延染色体が観察された(矢じり)。 |
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図2 植物におけるオーロラキナーゼ阻害による遅延染色体形成モデル。タバコ培養細胞におけるオーロラキナーゼ阻害の染色体分離異常には、片方の動原体のみが極への移動が遅延し遅延染色体となる経路(I、青矢じり)と両方の動原体ともに遅延染色体となる経路(II、赤矢じり)が考えられる。 |
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研究室HP |
http://www.bio.eng.osaka-u.ac.jp/cl/biocladm/matsunaga.html |