論文紹介

研究代表者

上田 貴志

所 属 東京大学大学院理学系研究科
著 者 Emi Ito, Masaru Fujimoto, Kazuo Ebine, Tomohiro Uemura, Takashi Ueda (corresponding author) and Akihiko Nakano
(伊藤瑛海、藤本優、海老根一生、植村知博、上田貴志(責任著者)、中野明彦)
論文題目 Dynamic behavior of clathrin in Arabidopsis thaliana unveiled by live imaging
(ライブイメージングによるクラスリンの細胞内動態解析)
発表誌

The Plant Journal, in press

要 旨   クラスリン被服小胞(CCV)を介した物質輸送は、膜交通における主要な機構の一つですが、これまでクラスリン被覆の植物細胞における分布や挙動は明らかではありませんでした。そこで私たちは、クラスリンをGFPで可視化し、その細胞内における動態を詳細に調べました。その結果、細胞板に局在するクラスリンが、クラスリン被覆小胞の切断に関わるGTPaseであるダイナミンとは独立に機能する可能性を見いだしました。また、細胞内のクラスリンはトランスゴルジネットワークに主に局在しますが(図1左)、共局在を半自動的に定量するプログラムを開発してクラスリンの分布を定量的に評価した結果、クラスリンがARA6の局在するエンドソームの近傍にも高頻度で局在することが明らかとなりました(図1右)。続いて、CCV形成に関わるARF GTPaseの活性化阻害剤、Brefeldin Aと、エンドサイトーシスを阻害することが知られているPI3Kの阻害剤、Wortmanninが、細胞膜上のクラスリン被覆小胞形成に及ぼす影響を調べました。その結果、Brefeldin Aが細胞膜上のクラスリン被覆ピットの数や動態を変化させること、Wortmanninが細胞膜上でクラスリン被覆形成を阻害し、その凝集を引き起こすことをそれぞれ見いだしました(図2)。これらの発見は、CCVを介した輸送の仕組みを理解する上で、重要な手がかりになるものと期待されます。
図1.(左)クラスリン(緑)とオルガネラマーカー(赤)の局在比較。クラスリンはトランスゴルジネットワークマーカー(mRFP-SYP43)と最もよく共局在する。RHA1-Venus:保存型RAB5の局在するエンドソーム、ARA6-mRFP:植物固有型RAB5の局在するエンドソーム、mRFP-SYP43:トランスゴルジネットワーク、ST-mRFP:ゴルジのトランス槽。Bars = 5μm.(右上)定量的解析の概略。(右下)定量解析の結果、クラスリンはARA6エンドソームの近傍にも高頻度で存在した。
図2.全反射顕微鏡観察により観察した薬剤処理が細胞膜上のクラスリン被覆ピットに及ぼす影響。Brefeldin A (BFA) 処理により、細胞膜上のクラスリン被覆ピットの数が減少した。一方Wortmannin (Wm) 処理は、クラスリンピットの凝集を引き起こした(矢尻)。Bars = 5 μm。
研究室HP http://www.biol.s.u-tokyo.ac.jp/faculty/tchr_list/uedatakeshi.shtml