形態統御学講座 Laboratory of Developmental Biology
発生成長制御学グループ Group of Development and Growth Regulation
- 准教授
- 吉岡 泰植物発生生長に関与するオルガネラ機能
- 講師
- 杉山 伸巨大ミトコンドリアの背景にある機構
- 講師
- 金森 章小型魚で生殖巣性分化機構を探る
- 助教
- 八木 克将ショウジョウバエ自然免疫の分子機構
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当グループは4名の教員で構成され、それぞれが独立したテーマで研究をしています。材料も研究法もさまざまですが、皆が発生や成長の調節のしくみへの興味を共有しており、互いの研究を建設的に批判したり、あるいはアイデアを出し合ったりしながら、それぞれの研究の発展を目指しています。こうした多様な研究者による協力体制は学部生・大学院生の教育にも活かされ、広い視野、複眼的思考、多彩な研究技術を身につけた学生の育成を目指します。
植物発生生長に関与するオルガネラ機能
色素体やミトコンドリアといったオルガネラは、様々な物質の合成や、核ゲノム遺伝子の発現制御を通して、植物の発生や生長に深く関与しています。しかし、植物の発生過程において、どのようにオルガネラが関与しているのかはよく分かっていません。そこで、私たちは、主にモデル植物であるシロイヌナズナやヒメツリガネゴケを用いて、形態形成に関係するオルガネラ機能の解明を目指しています。
小型魚で生殖巣性分化機構を探る
生殖細胞の性分化、つまり精子になるか卵になるかという分かれ目を研究しています。特にそれらの細胞分化と、その過程での生殖細胞と体細胞の間の情報のやりとりに興味があります。私が研究に使用している硬骨魚類は、XY染色体の分化が進んだほ乳類と異なり、遺伝的な雌雄によらず生殖細胞が卵と精子のどちらへも完全に分化できる場合が多いことや、性決定/分化の様式に甚だしい多様性があることなどから格好の研究材料です。メダカでは性決定遺伝子(dmy)が同定されており、同種は遺伝学と逆遺伝学両者のアプローチが可能な最良な実験動物の一つです。これまでに、卵形成特異的遺伝子の転写制御領域の同定や、卵母細胞が光るGFPメダカを用いた変異体の探索、などの多面的アプローチを行っています。脊椎動物では唯一自家受精で殖える小型魚 Kryptolebias marmoratus の生殖巣は、卵巣の背側の一部に精巣が分化した卵精巣です。この分化過程の分子機構を明らかにしたい。雌雄異体の近縁種、K. caudomarginatus の性分化過程と比較しながら研究を進めています。
巨大ミトコンドリアの背景にある機構
精子形成過程でショウジョウバエのミトコンドリアは劇的に変化します。精原細胞で数をまず増加させてから、精母細胞で融合・巨大化し、さらに形態を変えて1200μmを超える長いミトコンドリアが完成します。このような特殊なミトコンドリアの「形態形成」は、CTD脱リン酸化酵素遺伝子のtim50やdullardが、ショウジョウバエでそれぞれ1つから3コピーに増えたことにより実現していると解釈できます。精巣特異的に発現し、機能分化していると思われるこれら追加遺伝子の解析を通じて、ミトコンドリアが特化するために働く蛋白質移送制御機構、脂質合成制御機構の解明を狙っています。ミトコンドリアが秘める潜在能力を発揮させているこの仕組みに迫ることで、小さな細胞小器官の再評価を促せると期待しています。
ショウジョウバエ自然免疫の分子機構
ショウジョウバエを実験動物として、自然免疫など、外界刺激に対する応答の解析を遺伝学的手法により行っています。IMD経路は自然免疫系を制御するシグナル伝達系の一つです。IMD経路の標的遺伝子の発現は遺伝子により異なったパターンを見せることから単純なシグナルのオンオフ以外の制御が存在することが予想されるので、そのメカニズムの解明に取り組んでいます。
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