第10回論文紹介(2007.10更新)
- グループ名
- 形態統御学 発生生物学
- 著者
- 神戸中智章、村松慶幸、杉山伸、水野智亮、西田育巧
- タイトル(英)
- Essential roles of myosin phosphatase in the maintenance of epithelial cell integrity of Drosophila imaginal disc cells.
- タイトル(日)
- ミオシンフォスファターゼはショウジョウバエ成虫原基細胞の上皮細胞性の保全に必須である
- 発表された専門誌
- Dev. Biol. 309: 78-86, 2007.
ショウジョウバエ・ミオシンフォスファターゼの温和な突然変異体では、細胞の過増殖により、本来単層である成虫原基が多層の細胞層から構成されるようになる。強い突然変異を用いてクローン解析を行ったところ、突然変異ホモの成虫原基細胞はE-カドヘリンなどの上皮細胞マーカーの発現が消失し、細胞は基底膜の方に沈み込むことが示された。また、変異細胞は移動能が高まることが明らかになった。ミオシンフォスファターゼに対する抗体を作製し局在を調べたところ、細胞表面に局在することがわかった。ミオシンフォスファターゼは、細胞表層においてミオシンの活性を調節することにより上皮細胞としての特性の保持に必須であり、これが失われると、がん細胞のように過増殖、浸潤することが示唆される。このことは、構成的に活性化したミオシン制御軽鎖やミオシンの活性化因子であるRhoキナーゼを強制発現することによりミオシンの活性を人為的に高めることによっても確かめられた。
図1:
正常細胞(A, B;みどり色)は、移動性を示さないが、ミオシンフォスファターゼ(DMBS; C, D)の変異細胞は周辺の正常阻止期に移動する。同様の移動性は、構成的に活性化されたミオシン制御軽鎖(E, F)や、Rhoキナーゼ(G, H)の強制発現によっても見られる。

今後の予定