第10回論文紹介(2007.10更新)
- グループ名
- 超分子機能学講座 生体膜機能
- 著者
- 須藤雄気,古谷祐詞、John L. Spudich、神取秀樹
- タイトル(英)
- Early photocycle structural changes in a bacteriorhodopsin mutant engineered to transmit photosensory signals.
- タイトル(日)
- 光センサーになったバクテリオロドプシンの初期構造変化
- 発表された専門誌
- J. Biol. Chem. 282, 15550-15558 (2007)
太陽光は、生物のエネルギー源もしくは情報源として利用される。このような機能分化はどのように起こってきたのだろうか?我々は最近、3つのアミノ酸を置換することで、エネルギー変換に働くバクテリオロドプシン(BR)を、光センサーに転換することに成功した。この光センサー型BRは、エネルギー産生(機能変換前)と光センサー(機能変換後)を比較するための有用なツールとなりうる。本論文では、この人工蛋白質を用い、赤外分光法により構造・構造変化を解析した。BR及びSRIIのスペクトルと比較したところ、1)SRIIと同様に、導入したThr残基のO-H伸縮振動の変化及び発色団との立体的衝突、それに伴う発色団のねじれ構造が観測された。一方、蛋白質骨格や水分子の信号はBR型である。2)SRIIでおこる複合体形成効果が、光センサー型BRにおいても観測される。3)水素結合の直接観測から、3つのアミノ酸のうちThr残基が必須の部位である、ことがわかった。これらのことから、導入したThrとTyr残基との水素結合、及びその変化が機能にとって最も本質的な部位であることが炙り出され、残りの2つのアミノ酸は補助的な役割を果たしているに過ぎないことが示唆された。本論文は5月25日に刊行されたJBC誌の表紙を飾っている。
図1:
プロトンポンプであるBRと忌避応答光センサーであるSRIIの立体構造の重ね合わせ。両者間で74%のアミノ酸が異なるが、オレンジ色で示した3残基(Pro200→Thr、Val210→Tyr及びAla215→Thr)のアミノ酸置換により走光性(忌避応答能)を獲得する。
図2:
本成果が掲載された J. Biol. Chem. 5/25号の表紙図

今後の予定