論文紹介

第10回論文紹介(2007.10更新)

グループ名
生物化学
著者
百瀬隆喜、大嶋(中山)智恵、前田正洋、遠藤斗志也
タイトル(英)
Structural basis of functional cooperation of Tim15/Zim17 with yeast mitochondrial Hsp70.
タイトル(日)
酵母ミトコンドリアHsp70とTim15/Zim17の機能的協力の構造的基盤
発表された専門誌
EMBO Report 8, 664-670 (2007)

生命の主役であるタンパク質が正しく働くためには,細胞内の働くべき場所に正しく配置される必要があります。ミトコンドリアは1000~2000種類のタンパク質から構成された細胞内器官ですが,それらのタンパク質の大部分はミトコンドリアの外で作られるにもかかわらず,ミトコンドリア内に運ばれ,ミトコンドリア内の正しい区画に配置されます。われわれは2005年に,ミトコンドリアへのタンパク質輸送に関わる新しい因子としてTim15を発見しました。Tim15はミトコンドリア内のマトリクスに存在し,ミトコンドリアタンパク質を外から中へと引き込むモータ因子mtHsp70(分子シャペロンHsp70の一種)と協力して働くらしいことが分かっていました。しかしその機能の詳細は不明であったことから,今回NMR(核磁気共鳴)により,Tim15のコア部分の立体構造を決定しました。Tim15分子はL字型をしており,Lの次の短い辺の端にZnフィンガーが位置していました(左図)。また分子表面の静電ポテンシャルを計算したところ,負に荷電した部分(右図,赤)と正に荷電した部分(右図,青)の分布は不均一でした。そこでこれらの電荷分布を変えるような変異をいろいろと導入した変異体を作り,その機能を調べてみました。その結果,Tim15の機能に必須のアミノ酸残基を特定することができました。さらにこれらのアミノ酸残基は,mtHsp70の凝集を防ぐ働きをしていることも分かりました。すなわち,Tim15は分子シャペロンmtHsp70のシャペロン,として働くことが明らかになりました。Tim15にそれ以外の機能があるかどうかについては,今後の研究課題です。

図1:

カレンダー

今後の予定


pagetop