第10回論文紹介(2007.10更新)
- グループ名
- 発生生化学(臨海実験所)
- 著者
- 横田直人、澤田 均
- タイトル(英)
- Sperm proteasomes are responsible for the acrosome reaction and sperm penetration of the vitelline envelope during fertilization of the sea urchin Pseudocentrotus depressus.
- タイトル(日)
- アカウニ精子プロテアソームは受精時の先体反応と精子卵黄膜通過に関与する
- 発表された専門誌
- Developmental Biology 308, 222-231 (2007)
ウニの受精においては、精子先体反応にプロテアソームが関与し、精子の卵黄膜通過に19kDaの精子キモトリプシン様酵素がライシンとして関与すると考えられいるが、精子プロテアソームのライシンとしての機能は知られていない。そこで本研究では、 プロテアソームに特異的なインヒビターを用いて、アカウニの受精素過程に対する阻害を詳細に解析した。その結果、精子プロテアソームは、精子先体反応時(特に精子が卵ゼリーと反応後カルシウム流入が起こる前の段階)と精子の卵黄膜通過時の両者に重要な役割を果たすことが示された。実際に、精子先体内容物中にプロテアソームが存在することが、その活性測定とウエスタンブロット解析により確認された。このことは、ウニ精子においては、プロテアソームが先体胞に局在し、それが卵ゼリー通過時に先体反応によって細胞膜表面に露出され、卵黄膜の分解に関わることを示している。細胞外ATPを枯渇させると受精が阻害されるという結果もこの解釈と合致する。ウニでは、マボヤと異なり、卵黄膜は受精前からユビキチン化されていることが示され、哺乳類の受精系と類似していた。本論文は、ウニにおいても精子プロテアソームがライシンとして細胞外で機能することを初めて証明した論文である。
図1:
ウニの受精過程の模式図
ウニ精子はゼリー層に接触すると先体反応(先体胞 の開口分泌)を引き起こし、ライシンを細胞外に露出させて卵黄膜を分解する。本論文では、精子プロテアソームが先体反応と卵黄膜通過に関与すること、特に、後者で は精子プロテアソームが細胞外でライシンとして機能することを明らかにした。

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