論文紹介

第10回論文紹介(2007.10更新)

グループ名
形態統御学講座 植物発生学
著者
岩川秀和、岩崎まゆみ、小島昌子、上野宜久、相馬徹平、田中博和、Endang Semiarti、 町田泰則、町田千代子
タイトル(英)
Expression of the ASYMMETRIC LEAVES2 gene in the adaxial domain of Arabidopsis leaves represses cell proliferation in this domain and is critical for the development of properly expanded leaves.
タイトル(日)
シロイヌナズナの向軸側での ASYMMETRIC LEAVES2 遺伝子の発現は、この領域の細胞増殖を抑制すると同時に葉の適切な展開に必要である
発表された専門誌
Plant Journal 51, 173-184 (2007)

植物の葉は、シュートアピカルメリステム(茎の上部の成長点にある幹細胞群)の周辺から発生分化する。初期の葉原基は棒状であり表裏はないが、発生とともに表裏の分化が起こる。それにともなって、表裏の境界面で細胞分裂が誘導されて、葉の横方向への伸展が起こると言うモデルが提唱されている。しかし、どのような遺伝子がこれに関わっているかは不明である。今回、私たちは、シロイヌナズナのASYMMETRIC LEAVES2 (AS2) と AS1 遺伝子が、このような横方向への細胞分裂に負に関わっていることを示した。AS2, AS1 は、当初葉の左右相称性に関わる遺伝子として同定された。本論文では、AS2 のmRNA が子葉と葉の向軸側に蓄積していること、AS1 の mRNA は葉の維管束を中心とした葉の中央領域付近に蓄積していることを示した(図1)。AS1プロモーターに AS2 cDNA を連結したキメラ遺伝子(pAS1:AS2)を植物に導入すると、葉(子葉)の横方向への伸長が著しく抑制された。また、向軸側の方が背軸側の横伸長よりも一層抑制され、葉は上方へ湾曲した(図2d)。また、葉の湾曲は導入したAS2の転写レベルで規定されていた。このような湾曲は、as1as2 変異体における葉(子葉)の下方湾曲とは逆である。子葉の横方向の細胞数を調べたところ、as1as2 変異体では、向軸側の細胞数が相対的に上昇し、pAS1:AS2 発現株では減少していた(図2)。pAS1:AS2as1 変異体で発現させても、湾曲も細胞数の異常も見られなかった。つまり、AS2AS1 存在下で、葉の横方向への細胞増殖を負に制御していると考えられる。相対的には葉の向軸側の細胞増殖をより強く抑制する。これは、野生型におけるAS2の主な発現部位が向軸側であり、AS1 の主な発現部位が内側であることと矛盾しない。

図1:

AS2AS1の発現領域
(a), (b), AS2AS1 in situ ハイブリダイゼイション. 赤紫又は茶色がシグナル で、AS2 は葉の向軸側で、AS1 のシグナルは内側で観察された。(b), (c), 子葉と 第一葉におけるpAS2:GUS の発現領域(青色):葉の向軸側で強いシグナルが見える。(e), (f) pAS1:GUS の発現領域(青色):葉の内側の維管束に沿って強いシグナルが見える。

図2:

野生型と比較すると、as1, as2 変異体及びpAS1:AS2 を発現している植物の 子葉では、横方向への細胞数と向軸側・背軸側の細胞数の比率が変化していた野生型の子葉では、向軸面と背軸面の横方向の細胞数の比率が 47/50 (= 0.94); as1-1 では、50/40 (= 1.25); as2-1 では、 60/47 (= 1.28);pAS1:AS2 植物では、 27/59 (= 0.46)であった。

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