第10回論文紹介(2007.10更新)
- グループ名
- 形態統御学講座 植物発生学
- 著者
- Endang Semiarti、Ari Indrianto, Azis Purwantoro, Sulastri Isminingsih, Nilo Suseno, 石川貴章、吉岡泰、町田泰則、町田千代子
- タイトル(英)
- Agrobacterium-mediated transformation of the wild orchid species Phalaenopsis amabilis.
- タイトル(日)
- アグロバクテリウムを用いた胡蝶ランの原種Phalaenopsis amabilis の形質転換
- 発表された専門誌
- Plant Biotechnology 24, 265-272 (2007)
ランは世界を代表する園芸植物であり、これまでに多くの品種が育種されてきた。なかでも、胡蝶ランは、最も珍重されている品種である。近年、組換えDNA 技術が進歩して、園芸植物の品種改良にも有効な方法であることが立証されつつある。最近、いくつかのランの園芸品種に対する遺伝子導入法が開発されてきたが、品種により効率が異なり、まだ方法を改良する余地が多々ある。そこで、本研究では、胡蝶ランの原種であるPhalaenopsis amabilis(図 1)を用いて、簡便で効率の良い形質転換法を開発した。ポイントは若い実生をそのまま使うことである。また、シュート誘導効率を上げると期待されるシロイヌナズナのクラス1ノックス遺伝子である BP をマーカーとともに導入して形質転換効率を検討した。その結果、一つの実生から多数の形質転換シュートが形成された(図2)。しかし、BPの過剰発現は形態異常をともなうため、形質転換体が得られた後に、必要に応じてBP を除去する必要がある。そのような方法の開発が次の課題であろう。
図1:
胡蝶ランの原種(Phalaenopsis amabilis)の成長過程
WASP: weeks after seed planting. 形質転換に使用した材料は、3 WASP の実生である。
図2:
形質転換体のシュート A. 形質転換後 2 ヶ月目に、選択マーカーであるカナマイシン存在下(200 mgl-1)で生育しているシュート。B. 同じく形質転換後 6 ヶ月目のシュート。

今後の予定