第10回論文紹介(2007.10更新)
- グループ名
- 超分子機能学 超分子構造
- 著者
- David Popp , 山本明弘, 岩佐充貞、前田雄一郎
- タイトル(英)
- Direct Visualization of Actin Nematic Network Formation and Dynamics.
- タイトル(日)
- アクチンフィラメントのネマティックな網目構造の直接観察とその動態
- 発表された専門誌
- Biochem.Biophys.Res.Comm. (2006) 351: 348-353
アクチンフィラメントは、細胞の形を決めたり、細胞運動を担うが、このような機能発現にはフィラメントの集合が不可欠である。このような集合過程は極めて短時間に起きるが、細胞外では再現できなかったため集合のメカニズムは不明であった。また集合体の力学的特性を細胞内で計測する適当な方法が無かったため、フィラメント集合体が細胞の力学的特性をどのように左右しているか不明であった。本研究では、まず細胞外でフィラメント集合過程を再現するため種々の工夫を試みた。その結果、第一にcrowding agent(メチルセルロース等)によって蛋白質が自由に動ける空間を制限し、第二に著しく親水性としたガラス表面を細胞膜とみなしその近傍のみを観察したところ、アクチンフィラメントは細胞内と同様に急速にネマテック液晶ないしは束の網目構造を形成した。これはstress fiberやmicrovilliの形成に相当する。さらに、エバネッセンス照明による蛍光測定(TIRF法)によってアクチンフィラメント束の構造動態が測定可能となった。これらの結果は集合過程と動的特性の双方について、細胞内を模倣しているとの直接の証拠ではないが、細胞内の現象をかなりの程度再現していることは確かである。この結果より、高濃度のcrowding agentがありかつ親水性表面の近傍では、一般的な希薄溶液状態と比較し、蛋白質集合体の特性は著しく異なることが明確となった。
図1:
(a) エバネッセント照明を使っての蛍光顕微鏡観察によるアクチンフィラメントのネマティック液晶構造。一秒間に33コマの「ビデオレート」の動画として記録し、部分の構造の揺動を実時間で追跡することができる。バーは10 m。
(b) (a)に対応する部分の電子顕微鏡写真。バーは200 nm.

今後の予定