第9回論文紹介(2007.6更新)
- グループ名
- 遺伝子実験施設 遺伝子解析学
- 著者
- 服部 満、三宅 博、杉田 護
- タイトル(英)
- A pentatricopeptide repeat protein is required for RNA processing of clpP pre-mRNA in moss chloroplasts.
- タイトル(日)
- Pentatricopeptide repeatタンパク質は葉緑体clpP mRNA 前駆体のRNAプロセシングに働く
- 発表された専門誌
- J. Biol. Chem. 282 (14), 10773-10782 (2007)
Pentatricopeptide repeat(PPR)タンパク質は35アミノ酸保存配列を繰り返し持つタンパク質で、高等植物に数百個存在するがその大半の機能は不明である。PPRタンパク質の多くはミトコンドリアや葉緑体に局在すると予測されることから、オルガネラで何か重要な機能を担っていると考えられる。本論文では葉緑体に局在するPPRタンパク質の機能を明らかにすることを目的として、ヒメツリガネゴケのPPR531-11核遺伝子の遺伝子破壊株を相同組換え法により作製した。得られた遺伝子破壊株は原糸体の生長が著しく遅く、葉緑体の形態およびチラコイド膜の形成が野生株のものと大きく異なることが観察された。この原因を明らかにするため、葉緑体mRNAの蓄積パターンを解析した結果、葉緑体ゲノムから転写されたclpP pre-mRNA のRNAプロセシング効率が顕著に低下していることを見いだした(図1)。さらに葉緑体タンパク質の蓄積レベルを調べたところ、野生株と比較してClpPをはじめ、光化学系Ⅱの反応中心であるD1タンパク質、二酸化炭素を固定する鍵酵素であるRubiscoなどのタンパク質の蓄積量が大きく減少していた。以上の観察結果に基づいて、PPR531-11タンパク質の機能およびプロテアーゼClpPによる葉緑体タンパク質の品質管理に関するモデルを提唱した(図2)。
図1:
PPR531-11遺伝子破壊によるclpP mRNAへの影響
A. PPR531-11の模式図。B. 野生株 (WT)およびPPR531-11遺伝子破壊株 (KO) 内における葉緑体遺伝子clpP mRNAの蓄積パターンをノーザン法により比較した。 C. clpP mRNAのプロセシング過程を示す。それぞれのmRNAのサイズは、B.の各バンドに対応している
図2:
葉緑体内におけるPPR531-11の機能モデル
ヒメツリガネゴケ葉緑体内でのPPR531-11の機能およびプロテアーゼClpPによる 葉緑体タンパク質の品質コントロールをモデルで示す。

今後の予定