第14回論文紹介(2009.10更新)
- グループ名
- 遺伝子解析学
- 著者
- 服部 満、杉田 護
- タイトル(英)
- A moss pentatricopeptide repeat protein binds to the 3' end of plastid clpP pre-mRNA and assists with mRNA maturation.
- タイトル(日)
- ヒメツリガネゴケのペンタトリコペプチドリピートタンパク質はプラスチドのclpP pre-mRNAの3'末端に結合しmRNAの成熟に働く
- 発表された専門誌
- FEBS Journal 276 (20), 5860-5869 (2009)
植物には数百のペンタトリコペプチドリピート(PPR)タンパク質をコードする巨大な遺伝子ファミリーが存在する。PPRタンパク質の大部分はミトコンドリアやプラスチドに局在し、それらオルガネラの遺伝子発現制御に深く関わっていることが知られている。私たちはヒメツリガネゴケのPPRタンパク質PpPPR_38がプラスチドのclpP pre-mRNAの部位特異的なRNA切断に関与することを2007年に報告した(Hattori et al. J. Biol. Chem.: 第9回論文紹介を参照)。今回の本論文では、組換えPpPPR_38タンパク質と様々なRNA断片を用いたRNA結合実験(図1)を行い、PpPPR_38タンパク質がRNA配列特異的なRNA結合タンパク質であることを明らかにした。さらに、2本鎖RNA部分を特異的に切断するRNA分解酵素を用いたRNA切断実験やプラスチド抽出液を用いた標的RNA分子の安定性に関する実験を行った。その結果、図2に示すようなPpPPR_38タンパク質の機能に関するモデルを提案した。
図1:
RNA結合実験。
(A) 組換えPpPPR_38タンパク質、(B) 実験に用いたRNA断片(RNA-a~-e)の位置、(C) RNA結合実験結果の一例。結合したRNA断片を矢じりで示している
図2:
PpPPR_38タンパク質の働きを説明するモデル図。
PpPPR_38はclpP pre-mRNAの3’領域に強く結合し、5’領域に結合する。3’領域に結合すると安定なステムループ構造が形成され、部分的なRNA構造変化が起こる。その結果、エンドリボヌクレアーゼ感受性領域が形成され、RNAが部位特異的に切断される。スプライシングされてできた成熟clpP mRNAの3’ステムループに他のRNA結合タンパク質(cpRNPなど)と共結合してmRNAの安定性に寄与する。

今後の予定