第14回論文紹介(2009.10更新)
- グループ名
- 分子修飾制御学
- 著者
- 三村 覚、古俣 麻希子、岸 努、白髭 克彦、嘉村 巧
- タイトル(英)
- SCFDia2 regulates DNA replication forks during S-phase in budding yeast.
- タイトル(日)
- 出芽酵母SCFDia2複合体はDNA複製フォークを制御する
- 発表された専門誌
- EMBO J. in press
細胞が増殖するためにはDNAを正確に複製し、娘細胞に分配することが必須です。ユビキチン化を介した蛋白質分解はほとんど全ての生命現象に関わっています。E3ユビキチンリガーゼの一種であるSCF複合体においてはF-box蛋白質が直接、基質蛋白質と結合し基質特異性を決定しています。出芽酵母のF-box蛋白質の一つDia2はその欠失株がDNA傷害剤に感受性を示すことから、傷害をもったDNAの複製に関わることが考えられていましたが、その分子機構は不明でした。私たちは改変を施した酵母ツーハイブリッド法によりDia2に結合する蛋白質をスクリーニングしました。その結果、複製フォークの構成成分であるMrc1, Ctf4, Mcm2を単離しました。Dia2にはN末端にTPRモチーフ, C末端にLRRモチーフを持っていますがこれらは全てTPRモチーフに結合しました。Mrc1, Ctf4に関してはin vitro, in vivoの両方でSCFDia2の基質となりうることを示しました。また、ある条件下ではTPRモチーフがDia2の機能に必須の役割を持つことを示しました。さらに、ChIP-on-chip法によって、Dia2が複製フォークに局在し、ヌクレオチドが枯渇した際の複製フォークの進行の制御に関わることを見いだしました。これらの結果はユビキチンリガーゼによるDNA複製制御機構に新たな知見を加えるものです。
図1:
改変型ツーハイブリッドによるDia2結合蛋白質の探索 F-box蛋白質と基質の結合を安定化するために、1)F-boxを欠いたDia2をbaitとして用い、2)hostの内在性Dia2を欠失させてツーハイブリッドスクリーニングを行った。 Bは得られたMrc1とDia2の結合がこれらの改変により実際に安定化していることを示している。
図2:
Dia2欠失株での複製フォークの挙動 HUでS期初期に同調した細胞で、出芽酵母6番染色体上の、複製フォークの構成成分であるCdc45蛋白質の局在(青)とヌクレオチドの取り込み(赤)をChIP-on-chip法を用いて調べた。dia2欠失株では複製フォークが複製開始点から進行してしまっている。

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