論文紹介

第14回論文紹介(2009.10更新)

グループ名
超分子機能学講座 生体膜機能
著者
小嶋 誠司、今田 勝巳、佐久間 麻由子, 須藤 雄気、児嶋 長次郎, 南野 徹、本間 道夫、難波 啓一
タイトル(英)
Stator assembly and activation mechanism of the flagellar motor by the periplasmic region of MotB.
タイトル(日)
べん毛モーター固定子集合とその活性化機構におけるMotBのペリプラズム領域の関与
発表された専門誌
Molecular Microbiology, 73:710-718 (2009)

サルモネラ菌べん毛モーターのトルク発生は、Motタンパク質からなる固定子複合体内を透過するプロトン流と共役している。Mot複合体は、MotBの推定ペプチドグリカン結合(PGB)ドメインを介して、PG層に固定されていると考えられている。またプロトンの透過は固定子がモーターに設置されて始めて活性化される。我々はMotBのC末端ペリプラズム側断片(MotBC)の結晶構造を解明した。MotBCにはPGBドメインだけでなく、ペリプラズム側において運動に必須な部分がすべて含まれている。構造情報をもとに行った機能解析により、PGBドメインはプロトンチャネルを形成するために二量体となっていること、MotBCのN末端部分の大きな構造変化がPG結合とプロトンチャネルの活性化に必要であることが明らかとなった。

図1:

MotBペリプラズム側領域の構造変化が固定子複合体の集合と機能に重要である
(A)MotBCの推定PG結合部位。 MotBC二量体の結晶構造(Cyan / Magenta)にHaemophilus influenzaeのPal/PG前駆体(黄色 / ball-and-stick)の複合体の構造を重ね合わせた。MotBのPG結合部位は、二量体の上側表面に推定される。
(B)MotBΔLLの不活性状態 (i)と活性化状態(ii)のモデル。 MotBのペリプラズム側50残基を欠失させた変異体(Δ51-100, MotBΔLと表記)は、構造の解けたMotBC部分を膜貫通部位につなげたコンストラクトで、MotAと複合体を形成し機能することができる。モーターに設置されていないMotA/MotΔL複合体は、膜上を自由に拡散でき、過剰発現しても菌の生育阻害が起きないことから、プロトン透過能の低い不活性な状態と考えられる(i)。一方、この複合体がモーターに設置され、プロトンを透過しトルクを発生する活性化状態になるには、PG層に固定されなければならず、(ii)に示されるような大きな構造変化が必要である。MotBΔLにおいてヘリックスα1のLeu-119(青丸)をProまたはGluに置換すると、大量発現による生育阻害が起き、MotBCのN末端構造変化が活性化に重要であることを示唆している。

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