第14回論文紹介(2009.10更新)
- グループ名
- 超分子機能学講座 生体膜機能
- 著者
- 大野 真佐惠、濱田 勉(北陸先端大)、滝口 金吾、本間 道夫
- タイトル(英)
- Dynamic behavior of giant liposomes at desired osmotic pressures.
- タイトル(日)
- 任意の浸透圧を掛けたときに見せる巨大リポソームの挙動
- 発表された専門誌
- Langmuir, Vol. 25 (No. 19), p. 11680-11685 (2009)
生体膜の基本構造は脂質二重膜からなり、周囲の環境やシグナルに応答して性質や形態挙動を変化させる。膜に影響を及ぼす環境要因の中で浸透圧ストレスは最も身近で重要な例である。これまでにも膜の浸透圧耐性についての研究は少なくなく、その根本的な機構を調べるために人工脂質膜小胞(リポソーム)を用いたものも多い。しかし、これまでの一般的なリポソーム調製法を用いた手法では、任意の浸透圧をリポソームに加えることは困難であった。予め作成しておいたリポソームの外液を灌流装置などを用いて交換するような方法しかなかったので、掛けられている浸透圧とリポソームの挙動とを正確に対応させることが不可能であった。
本研究では油中水滴法を用い、内部に水を持つリポソーム(直径数十ミクロン)をスクロースまたはKCl溶液中に作製することで、任意の浸透圧を加えることが可能となった(図1左)。リポソームの最も特徴的な応答は大きな膜穿孔であった(図1右)。浸透圧ストレス下では、脂質二重膜の疎水性部分を水分子が通過する可能性が考えられていたが、今回の観察結果により、脂質二重膜には大きな膜穿孔でも容易に生じ、多量の水が一度に通過できる場合もあることが明らかになった。また外液溶質濃度を高くしていったとき、油中水滴法によるリポソームの形成から膜穿孔を含めて何らかの応答を示すまでの時間が短くなることが示された(図2)
図1:
図2:

今後の予定