第14回論文紹介(2009.10更新)
- グループ名
- 超分子機能学講座 生体膜機能
- 著者
- 鈴木 大介、古谷 祐詞、井上 圭一、菊川 峰志、酒井 誠、藤井 正明、神取 秀樹、本間 道夫、須藤 雄気
- タイトル(英)
- Effects of Chloride Ion Binding on the Photochemical Properties of Salinibacter Sensory Rhodopsin I.
- タイトル(日)
- 細菌型・緑色光受容体、センサリーロドプシンIへの塩化物イオン結合
- 発表された専門誌
- J. Mol. Biol. 392:48-62 (2009)
植物園で、色とりどりの花を見て心豊かになり、美術館で、色彩豊かな絵に感動する。私たちヒトに限らず、生物にとって"色"を認識すること(視覚)は、生物本来の営みに重要な感覚応答である。それでは、生物はどのように"色"を見分けているのだろうか?その実体は光受容体(レチナールタンパク質)であり、生物は、青・緑・赤色光への3つの受容体を持つことで色彩を認識する。
緑色光受容体・センサリーロドプシンI(SRI)は、古細菌から初めて見出されたレチナールタンパク質で、一光子・二光子反応により、誘引・忌避の正反対のシグナルを後続蛋白質に伝える。生物界に広く存在するレチナールタンパク質群において、塩化物イオンとの結合が、その機能に深く関与するものが多数存在する。従来のSRIは低塩濃度下において瞬時に変性するため、機能と塩化物イオンの関係は不明であったが、本論文では、我々が2008年に見出した脱塩可能なSRIを用いて、1)塩化物イオン結合による色・シグナル伝達活性制御、2)変異体による結合部位解析について報告した。これらの結果から、塩化物イオンが発色団レチナールのβイオノン環近傍に結合し、プロトン化シッフ塩基の電荷を不安定化することで色を制御していると提唱した。このような色制御機構は全く新しいものであり、意外な結果として評価された。
図1:
SrSRIの光化学的性質に対する塩化物イオンの影響とその結合部位 塩化物イオンの結合により基底状態で色を長波長(赤色)側に制御し、活性中間体であるM中間体ではその崩壊速度を遅くすることで活性を高める(左図)。変異体解析により、SRI蛋白質に特徴的に保存されたヒスチジン残基が塩化物イオンの結合に関わると示唆された(右図)

今後の予定